自転車が好きな杉本さん、親切だったロタキオさん
凄惨なひき逃げ現場を目撃した近くの美容室経営の60代男性がこう証言した。
「何台ものパトカーのサイレンが鳴り響いていたので、何ごとかと思って外に出ると、目の前を白い車が走り去って約20メートル先で歩道に乗り上げ、次々に人をはね飛ばしていった。横断歩道の信号の高さくらいまで、人が宙に舞っていたのを目撃した。
パトカーの追跡から逃げようと歩道でも結構なスピードを出していて、歩いている人のことなどどうでもいいと言う感じに見えました。すでに横断歩道で女性が1人倒れていて、パトカーから降りた警官がすぐ救護活動をしていました。この幹線道路では追突事故はよく起こるけど、こんなひき逃げ事件は見たことがありませんよ」
亡くなった杉本さんと同じアパートに住む80代男性は、肩を落として取材に応じた。
「杉本さんと最後に会ったのは4、5日前だったな。アパートの駐輪場のあたりで挨拶してね。普段も長話をするような間柄ではないから詳しいことは知らないけど、杉本さんはこのアパートに来てまだ1年も経ってないんじゃないかな。一人暮らしで仕事はしてないって聞いてる。
顔を合わせるのも朝だったり昼だったりで基本は挨拶だけなんだけどさ、あまりにも可愛らしい緑色の自転車に乗っているから、『いい自転車に乗ってるな』って声をかけたことがあるんだ。そうしたら『自転車好きなんだ』って言っていたよ。ちょっと小型の、若い人が乗りそうな自転車だったんだけどな。
その自転車もずっとないし、彼の部屋の電気もつかないからおかしいと思ってたら、報道の人が来て事件のことを聞かされた。取材の人に、現場にあったという杉本さんの自転車の写真を見せてもらった。それで本当に亡くなったんだって……」
いっぽう、ロタキオさんの自宅アパート近くに住む40代女性はこう語った。
「少し前からフィリピンの方々がここら辺に住み始めて、どうやら学生さんで近く日本語学校に通っていると聞いていました。特に近隣トラブルとかはなく、挨拶もちゃんと正しい日本語で言える真面目な子っていう印象ですよ。彼氏さんがいたって聞いてた」
同じアパートの別部屋に住む外国人男性も、言葉少なにロタキオさんについて振り返る。
「朝見かけたり夜に帰ってくるところを何度か見かけました。会った時は『ハロー』って感じで挨拶するいい子。私が見かける時はいつも彼氏っぽい人と一緒にいて『仕事に行くところ』って言っていた。事故にあったというのは聞いたから知っている。うん…残念……」
また、ロタキオさんの友人は「日本語をたくさんおしえてくれて、親切だった。彼女には夢もあったのに…」と肩を落とした。
警視庁は逮捕された男の氏名を公表するかも含め、慎重に調べを進めている。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班













