「コメはあるだけほしい」と血まなこになっていた集荷業者が…

大規模コメ農家の現状を話してくれたのは、栃木県さくら市で約25ヘクタールの大規模な「岡田農園」を運営している岡田伸幸代表だ(2025年6月7日に公開した♯15♯16に登場)。まず、高止まりを続けるコメ価格の現状をどう分析しているのかきいた。

「令和の米騒動のときは、集荷業者の間で価格の吊り上げ合戦が起こって、どんどん高騰していきました。その時、高く買い付けてしまった業者が後に引けなくなっているんでしょうね。結局、コメは足りていたんですよ。今となってみれば何がコメ不足を引き起こしていたのか、という思いです。

今年も8月いっぱいはコメ騒動の過熱感が残っていたのですが、9月に入って風向きが変わりました。ウチが取引をしている集荷業者は9月頭に仕入れ金額が下がって60キロ3万3000円になり、今は3万円くらいまで落ちました。

ここら辺は農協の概算金 が3万1000円だから、農協の方が高く売れる状況です。なんせ集荷業者が『もうコメいらない』と公言しているぐらいですから」

今年収穫したコメと共に取材に応じる岡田さん(撮影/集英社オンライン)
今年収穫したコメと共に取材に応じる岡田さん(撮影/集英社オンライン)
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ついこの前まで「コメはあるだけほしい」と血まなこになっていた集荷業者が買い控えに転じた理由は何なのか。

「ファミレスなどコメを必要とする大手の外食産業に卸している集荷業者にとっては、売り手市場から買い手市場に戻りつつあり、コメの価格が落ちるのを待っている状況だと思います。おそらく来年6月分くらいまでのコメはもう確保していて、その時期にはまた買い入れが始まるでしょう。

しかし、いま新米が余っている状況を業者は知っていますから、来年もコメ余りが続けば当然安く買い叩きますよね。ただ、 スーパーの店頭に並ぶコメの値段が下がるのは、しばらく先でしょう。高い値段で仕入れたコメを売り切るまでは、なかなか安くしづらいですから。

さらに備蓄米ブレンド、外国産米などのより安いコメの選択肢がある以上、まずそちらから売れていくという状況もあります。備蓄米ブレンドが5キロあたり1000円くらい安く買えますからね。

新米が出たんだから農水省も備蓄米を引き揚げればいいのに、まだ流通の経路に乗っていない備蓄米まで放出していますからね。その分、新米は売れなくなるし、そうなるとスーパーに卸している業者も在庫を抱えたままになりますから、それをさばき切るまでは安くしにくい。ということで、来年の新米が出てくるまでは下がらないんではないかと思いますよ。

それ以降は下がる基調の見込みで、大手の外食産業は60キロあたりで1万円ほど下がると見ているようです。その頃になれば、スーパーのコメの店頭価格も今よりは2割ほどは下がるのではないかなと思います」