「コメを引き取りに来るという口約束をすっぽかす業者もいる」
「米騒動」にまで発展したコメ不足だったはずだが、今現在のコメ余りの状況はどれほどのものなのか。
「ウチでも現実的にすごい量の在庫を抱えています。去年のいまごろは物がなく冷蔵庫も空っぽだったのに、今は売れない。ここまで早く急転するとは思いませんでした。集荷業者の倉庫もいっぱいなんでしょう。売り先が見つからないというのは私は過去には聞いたことないですね。
これは備蓄米が原因だと思いますよ。備蓄米がある以上、その分、新米はいらないですよね。業者がダメなら農協があると思うかもしれませんが、農協は指定品種じゃなければ売れません。
ウチの場合は業者さんに『すべて買い上げる』という契約をしてもらっているので現状は『もうちょっと待ってほしい』と在庫の保管という形になっています。しかし、周りのコメ農家ではそうではない人がたくさんいて、『売れないから助けてほしい』と相談の電話がかかってきました」
今年から飼料米から主食米に生産を切り替えたコメ農家も多数あったが、「売り先がない」と頭を抱えているという。
「引き取りに来るという口約束をすっぽかす業者もいるようです。数か月前までは『あるだけほしい』と言われていたので油断したのかもしれませんが……。最悪、在庫で抱え続ければくず米になりますが、私の繋がりで買い入れしてくれる業者さんを見つけてなんとかなりました。
業者はこんな状況ですが、個人のお客さんは新規の方が今でも増えています。スーパーのコメが高すぎるからという理由の方がほとんどですね。ウチは玄米で売っていますが、5キロあたりで精米換算するとおよそ2980円で出していますから」
初の女性首相である高市早苗内閣に交代し、農水相も小泉進次郎氏から農水官僚出身の鈴木憲和氏に代わった。その影響はどう出ているのだろうか。
「内閣が代わって需要に応じた生産に調整すると方針が変わりましたが、それは正しいと思いますよ。鈴木農水大臣の『コメの値段は市場で決まるので政府が関与すべきではない』という発言も当たり前の話です。例えば自動車の値上げが続いていますが、コメに介入するならコメ同様にクルマにも介入すべきでしょって話になりますよね。
小泉氏はその場しのぎの消費者目線という感じでしたが、高市政権に関しては非常に現実的だと思います。そもそも『減反』という言い方がおかしいんですよ。もう減反はなく、生産指数を出しているだけですから。しかもよその地域は知りませんけど、この地域では生産指数にも従わず、先祖代々変わらずの量を作っていますからね」













