受動的な対処法は、自らの死を早めるだけ
青森のラーメン店の男性は「投げ返し」、空手家は「顔面を蹴り」、ロシアの老人は「頭突き」を浴びせ、アメリカのレスラーは「背中に飛び乗った」。彼らは全員、「自分から攻撃した」のだ。
「常識」は、人間を「獲物」として認識していない、通りすがりのクマを刺激しないためのマナーに過ぎない。ひとたびクマが「捕食モード」に入った瞬間、これらの受動的な対処法は、自らの死を早めるだけの、無慈悲なマニュアルへと変貌する。
「大声を出すな」「攻撃するな」という教えは、個人の生存本能を奪い、パニックを恐れるあまりに思考停止を誘発する。
ロシアの老人が言うように、「怖気づいたら殺される」。彼らが生還できたのは、システム化された無意味な常識を捨て、個人の持つ「生きる意志」と「闘争本能」を爆発させたからに他ならない。
では、クマに遭遇したらどうすればいいのか
では、どうすべきか。クマに遭遇したら、まずクマ撃退スプレーを噴射する準備をしながら、冷静に相手を観察することだ。
距離が遠く、クマがこちらに気づいていないなら静かに立ち去る。気づかれても、攻撃の意思がないなら後ずさりする。だが、相手に明確な殺意と捕食の意思が見えたなら、話は別だ。
あらゆるものを武器とし、大声を上げ、決して諦めないこと。目、鼻、顔面といった急所を狙い、相手が怯むまで反撃する。生還者たちが示したのは、死の恐怖を前にして「戦う」という、生物としての最後の選択肢である。
生還者たちの奇跡は、常識的なクマ対策の限界と、「生きる意志」と「闘争本能」の重要性を私たちに教えている。クマが人を「食料」と認識した時、受動的なマニュアルは命取りとなる。
我々は、死を前にした時、臆することなく「抵抗」し、「戦う」という生物としての最後の選択肢を爆発させるべきです。それは、自然の脅威に対する人間性の復権に他ならない。
文/小倉健一 写真/shutterstock













