長生きの秘訣は「悪意をもって解釈せず、素直に人付き合いすること」

「理容 ハコイシ」の再オープンの予定はないのか、聞いてみたところ、

「もう手も震えるし、カミソリでお客さんの頭を切ってしまうかもしれない。だから今はあまりやりたいと思わないね」

と語った。それでもハサミを手渡すと、「リーゼントとか三角カットが得意だったのよ」と得意げにハサミさばきを披露してくれた箱石さん。理容師という仕事を選んでよかった点を聞いてみると、

「父からは『これからの女は手に職をつけたほうがいい。夫に先立たれても食っていけるように』と言われて、上京を決めました。だから自分で開業して、身一つで食べていける理容師の仕事を選んで本当によかった。毎日お金も入りますしね」

と笑顔で語った。

長生きの秘訣を聞いてみると、

「悪意をもって解釈せず、素直に人とお付き合いすることですかね。世渡りは難しいですから。区別せずに人と接することで素直に世渡りできると思いますよ」

今はハサミを休めながらも、その誠実でまっすぐな人柄と優しいまなざしで、変わらず周囲の人々の心を整えているようだ。

#後編へつづく

109歳とは思えない肺活量を駆使し、9本の蝋燭を一気に吹き消す箱石さん
109歳とは思えない肺活量を駆使し、9本の蝋燭を一気に吹き消す箱石さん
すべての画像を見る

取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部特集班