「市街地のクマは人間が怖くないみたいに振る舞っています」

こうしたクマ出没に関する連日の報道を受け、SNSでは「コロナ禍並みの緊急事態」「学校閉鎖やリモート授業にすべき」「コロナ禍ならぬクマ禍」など、さまざま意見も飛び交っているなか、現在まさに臨時休校する小学校もある。

10月28日午前4時50分頃、秋田市千秋矢留町の民家敷地にクマ1頭がいるのを住民が目撃、この情報を受け学区内の小学校は28日当日に休校を決定した。教員は話す。

「全校児童155人の安全を守るため31日まで休校予定です。授業はオンラインではなく保護者に課題を取りに来ていただき、それを行なうようにしています。28日午後には小学校のフェンス上で再びクマが目撃されたため、休校にしていてよかったです。職員も児童の課題作りに追われています」

写真はイメージです(PhotoAC)
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山と川に挟まれた秋田市内の小学校に28日15時過ぎに電話取材を申し入れると「今まさに付近でクマが目撃されたため、全校児童を校内に待機させている」とのことだった。

さらに、マタギの文化が色濃く残る山形県の山間部にある小中学校が統合された学校の校長は「全校児童25名ですが、一番遠くに住む子は家から4、5km離れた所から自転車通学です。登下校中にクマを目撃した児童もいます」と話す。

「我々は幼い頃からクマと遭遇したときの対応を教わっています。目を合わせず後退りして逃げるようにと。そのように対応すれば、本来は人間が怖いはずのクマも山に帰るはずだった。でも市街地のクマはどうやら人間が怖くないみたいに振る舞っていますよね。

近年、目撃されるクマは同じツキノワグマでも知らないクマだなと思います。でも、それにしても山でも今年は目撃情報が多いです。なぜここまでクマがその姿を表すようになったか? まったくわかりません」

山形県の景色(PhotoAC)
山形県の景色(PhotoAC)

都内の中学校にも影響が出ている。大田区の中学校では毎年、長野県上田市の宿泊施設で林間学校を行なっているが、対応する必要に迫られた。この10月に中学1年生の林間学校の引率にあたった中学校教師は言う。

「あまりにクマの目撃情報が多く、長野県もクマの出没が多発するエリアですから、今年初めて全教師と引率にあたる大人は熊鈴を持って出ました。例年ではしないことですが、今年は持参しようと学校長の指導により購入しました。夜間の星空体験の際も懐中電灯で周囲を照らしながら警戒しました」

写真はイメージです(PhotoAC)
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ただ長野県ではクマの生息域と人間の生活空間を分ける「ゾーニング」を10市町村で今年6月に導入した成果なのか、例年より目撃情報が減っているとの報道もある。長野県千曲市でクマと見られる動物を目撃したという小学校の校長に話を聞いた。

「10月27日、用務員さんが学校の外でクマらしきものを目撃したとの報告がありましたが、先ほどまさに市の農林課より『クマではなくイノシシだった』と報告がありました。もともと当校の全児童がランドセルに熊鈴をつけており、28日朝は集団で登校させていました。しかしイノシシでも獣に違いませんので、引き続き子どもたちの安全を第一に対応していきます」

写真はイメージです(PhotoAC)
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29日早朝には山形県南陽市の小学校の校舎の窓ガラスに激突するクマも出現。校内にクマが入った様子はないようだが急きょ、臨時休校にしたようだ。クマが冬眠するまで、あと1か月ほど。クマはの動きは活発化している。子どもたちや教育に関わるすべての人が何事もなく学校生活が送れる日が来るのは、近いようでまだ遠い。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班