根拠の薄い介入仮説に依拠した姿勢

客観的な分析は、平氏の主張がいかに杜撰なものであったかを物語っている。

東京大学の鳥海不二夫教授は、Yahoo!ニュース(2025年7月16日)に寄せた分析で、特定のニュースサイト関連アカウントのフォロワーに、ロシア政府系メディア「Sputnik」の情報を拡散する層が多いことをデータで示した。これは事実である。

しかし、鳥海教授は、このデータから「ロシア製ボットが参政党と深い関係にある」と結論付けることは飛躍であり、陰謀論的な過大評価であると明確に釘を刺している。冷静な専門家の分析を称賛したい。平氏は、この科学的な態度を爪の垢ほどでも煎じて飲むべきであった。

平氏の行動は、気に入らない意見を持つ級友を「あいつはスパイだ」と叫んで排斥しようとする「こどもの論理」だ。複雑な現実を理解する努力を怠り、全ての原因を単純な敵の存在に求める。権力者がこの陰謀論という麻薬に溺れるとき、社会の分断は決定的なものとなり、自由な議論の土壌は完全に破壊される。

「現金2万円給付」の木原誠二氏

そして、石破派のブレーンと目され、岸田政権から石破政権に至るまで権力の中枢にあり続けた木原誠二氏。その本質は、国家の百年を見据える経世家ではなく、目先の選挙と政権維持のためだけに知恵を絞る、小手先の策士といえないか。

 

木原誠二氏の政策には、経済合理性というものが存在しない。あるのはただ、「いかに国民の不満を一時的に逸らし、政権を延命させるか」という、冷徹な政治工学だけである。

その典型が、岸田文雄元首相の「増税メガネ」という不名誉なあだ名への対応として推進した、4万円の定額減税であった。

この政策は、多くの専門家やメディアから「手間ばかりかかり、経済効果は薄い無意味な減税」と酷評された。経済を良くするための手術ではなく、国民の怒りという痛みをごまかすための一時的な鎮痛剤ともいえる。

木原誠二氏
木原誠二氏

高市政権によって当然の如く葬られた「現金2万円給付」。週刊文春(2025年6月19日)が「自民党が突如、7月の参院選公約に、全国民に1人当たり2万円の給付金を配るとぶちあげた。野党がこぞって打ち出した消費減税への対抗策だが、このプランを考えたのは自民党の木原誠二選対委員長(55)だった」と報じた。