沖縄は「僕の真ん中にある感じ」
沖縄に戻ってからは、趣味の釣りやツーリングも大堪能しているという。
「やんばる(本島北部)から船で伊是名島、伊平屋島の手前くらいまで釣りに行ったりします。魚影(水中で見える魚の姿)も濃くて、いろんな魚種が釣れるんですよ。
カジキマグロもね、1回ヒットして。あまりのデカさにビビって、バラしてしまいましたけど(笑)。ツーリングは本島を走り尽くして、逆にもう走るところがなくなってますね」
そう笑いながら話す川田は最近、“泡盛マイスター”の資格も取得したという。
「もともと泡盛が大好きでよく飲んでいて、極めてみようと思ったんですよ。泡盛の歴史をたどってみたら、また戦争にたどり着いたんです。泡盛は黒麹菌だけで作られた、世界でも珍しいお酒なんですが、戦争のときに1回、黒麹菌が全部なくなってしまって。でもたまたま酒造所の焼け野原から見つかって、復活を遂げたんです。
僕が今、興味のあることは、全部どこかで戦争につながっていて。先人の思いもわかるし、沖縄の良さも世間の人たちに伝えられる。僕だからできるやり方で、みんなに知ってもらえたらいいなって」
沖縄のテレビ局でレギュラー番組(『ガレッジセールの英雄会議』)を持つ川田だが、新たに始めた笑いがある。スタンダップコメディだ。もともとは、沖縄の後輩芸人に誘われたのだという。
「どんな感じなの? と思って見に行ったら、沖縄の言葉で笑いを取っていて、“これ、いいな”と思って、ピンでやり始めました。今までは標準語で漫才をやっていたけど、もう完全に沖縄の言葉で」
沖縄以外の人には、何をしゃべっているのかさっぱりわからないエンターテインメントなのだと誇らしげに語る川田の表情はどこか優しげだ。
「ありのままで伝わる笑いって、めちゃくちゃ楽しくて、“うわ、これ気持ちいいな”と。完全にハマりました。なので毎月、ステージに立っていますよ。150人くらいの小さな箱ですが、その分、お客さんとの距離も近い。チケットが完売した時は嬉しいなと思うのとありがたいなって本当思います」
ガレッジセールではゴリが作ったネタに、ふたりで肉付け作業をしているが、このスタンダップコメディではもちろん川田自身がネタを考えている。
「大変ですけど、やっぱり楽しい。お客さんから笑いが起きたときは快感ですし。若いころはただただ必死だったけど、沖縄で暮らす今は心に余裕ができて、本当に自分のやりたいことが見えてきていますね。
これからも、ずっと沖縄で暮らしていくつもりですよ。ただ、嫁がこっちに来てくれそうな気配は一向になくて、おかしいなぁとは思っていますけどね(笑)」
最後に、川田にとって沖縄とは何かと尋ねてみた。
「沖縄……。言葉にするなら、すべてとか、命とか、魂とか。なんかそういう、いちばん深くて、いちばん僕の真ん中にある感じですかね」
かつては“じゃないほう芸人”だった川田。今は“うちなんちゅ”として、うちなんちゅと自分のために、大切な命を生きている――。
後編では、川ちゃんから見た相方・ゴリについて語ってもらった。
取材・文/池谷百合子 撮影/矢島泰輔












