新しいジャンプスタイル
首都のヘルシンキには、風洞実験の施設があったので、そこでジャンプのフォームもチェックしました。
ベストな踏切の角度を知るために、天井から吊るされた状態で風を当てて、スキー板の角度を調整しながら、揚力のデータを取っていきました。また、踏切から滞空姿勢に移るときの、手の平を広げるタイミングなども、ベストなものを探っていきました。
ヘッドコーチのペッカからは、新しいジャンプスタイルについて、助言を受けました。それまでの直線的な前傾姿勢から、腰を「く」の字に少し曲げてみてはどうかと。
おなかにカーブが生まれることで、そこに風を受けて揚力を得るという理論です。言われてみれば確かに、飛行機の翼や、凧揚げの凧も、そのように丸みを帯びた形をしています。
腰を曲げると、流線形のカミカゼスタイルは損なわれます。飛距離だけでなく、飛型も「世界一の美しさ」を自負している僕としては、「く」の字に躊躇するところもありました。
しかし、その夏のラージヒルでの練習で、失敗したジャンプを立て直そうと「く」の字を試したところ、体が急上昇したのです。練習でしたが、その台のバッケンレコードを超える150.0メートルを記録しました。もう一度試してみると、全く同じ感覚で150.0メートルを飛びました。
どん底から浮かび上がる。18歳で、クラシカルからV字ジャンプに移行してから12年。次の10年を戦うための、新たなジャンプが生まれようとしていました。
フィンランド式のトレーニングは、楽しくて合理的。そしてふたりのコーチは、教えることのプロでした。













