「日頃から女性に対して危うい言動が目立ちました」
自らの誤りを認めない古謝市長の特異なメンタリティーが事態の複雑化を招いたともいえるが、その言動の危うさはかねてから問題視されていたという。
冒頭の地元関係者が声を潜めてこう明かす。
「古謝市長のセクハラ体質はかなり以前から指摘されていたことです。地元風にいえば典型的な『シージャー(先輩)気質』の人。気さくで親分肌。面倒見もいいから慕う人も多いのですが、日頃から女性に対して危うい言動が目立ちました。
女性に異性関係を詮索するような軽口をたたくのは日常茶飯事。親しくなった職員らを自宅や自身で主催した身内の会に呼ぶこともありました。衆人環視の中でハグやキスをするということはありませんでしたが、二人きりの場面などでセクハラととらえられるような接触をするのです。
報道ではセクハラ被害について『ハグ』と伝えられていますが、それも一般的なイメージの軽いハグとは違ったりする。実際に、ぎゅーっと抱きしめるような抱擁を受けた人もいます。ただ、こういった被害を申告しようにも、幹部職員も自分の身内で固めており、被害にあった職員らも、古謝市長の粛清を恐れてみんな口をつぐんでしまうのです」
今回の問題では、古謝市長がフェイスブックなどのSNS上で最初に被害を訴えた元運転手の女性らへの人格攻撃を続けたことにも批判が起きている。
しかもその投稿の内容には、真偽不明の情報や女性側のプライバシー侵害に当たるような内容も複数含まれていたとされる。さらに、こうした危ういネット投稿にも“前科”がある。
「市町村合併で知念村や佐敷町など4自治体が合併して南城市が誕生した2006年に市長となった古謝市長ですが、4期目を狙った2018年の選挙では落選しています。65票という僅差での惜敗でしたが、この敗因のひとつと言われているのが、SNSでの過激投稿でした。
敵対する政治勢力を真偽不明の情報も交えて攻撃していたことが有権者に嫌気されたといわれています。それに、市長にはお抱えの霊媒師がいるとも言われており、一時はその霊媒師の助言に従って県知事の座を狙っていたこともあるほど信心深い一面もあります。そうした指向がSNSの投稿にも反映され、首長という公人らしからぬスピリチュアルな書き込みをして周囲を引かせていました」(前出の地元関係者)
地元紙によると、不信任決議につながった音声データには、「与那原の神女(ノロ)が言っていた」として女性に訴訟をちらつかせて脅しをかけるような発言も記録されていたという。
「神女(ノロ)」とは、祭祀を司る琉球王朝時代からある「神職」で、祭政一致体制を敷いた琉球王国では地域の行政官の役目も担ったとされる。中国大陸由来の儒教、道教などの影響も受けたアニミズム的な祖霊崇拝とも言うべき、独自の信仰が根付く沖縄では、在野の霊媒師「ユタ」とともに地元では高位の霊能力者として認知されている。
もちろん、信仰は憲法で保障された『信教の自由』に関わる部分であることは言うまでもない。ただ、公人の立場でこうした“神がかり”的な言説を交えて相手を追い詰めていたことに驚きを禁じ得ない。
ただ、疑問なのは、なぜ古謝市長はこれほどのまでの権勢をふるうようになったのかという点だ。
「古謝市長は市町村合併前の旧知念村から助役、市長へと上り詰めており、官民問わず、多くのシンパを抱えています。さらに二階俊博元自民党幹事長と関係が近く、県のインフラ整備関連の外郭団体の会長を長年務めるなど、自民党県連内でも、『ウットゥ(後輩)』の立場にある現職の地元国会議員も頭が上がらないほどの影響力がありました。こうした背景もあって、『誰も逆らえない』という空気が醸成されていったように思います」(同前)
今回の騒動は、首長の権限が強大であるがゆえに、ハラスメント防止の仕組みが脆弱なまま放置されてきたという制度面の問題も浮き彫りにした。これは、南城市だけでなく全国の自治体に突きつけられた課題でもある。内部通報制度の整備や第三者機関による調査体制を強化しなければ、同様の“悲劇”は繰り返される。対策は急務だ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班