「やっぱり仲間がいないと」はイジメじゃないか

今回のステマ騒動、ことの発端は週刊文春の報道だった。総裁選候補である小泉進次郎陣営の牧島かれん事務所からステマ依頼メールが送られていたというのだ。牧島氏は選対の「総務・広報班」として小泉陣営を支える人物だ。

牧島氏の依頼はニコニコ動画でポジティブなコメントを書いてほしいというもので「ようやく真打ち登場!」「去年より渋みが増したか」といったコメント例も記されていたという。

はっきりいって読んでいるこちらが恥ずかしくなってしまうような文言だ。

「ステマ要請」を認め、謝罪した小泉進次郎農水相(本人Xより)
「ステマ要請」を認め、謝罪した小泉進次郎農水相(本人Xより)

ただ、コメント例の中には進次郎候補を応援するものだけではなく、「ビジネスエセ保守に負けるな」「やっぱり仲間がいないと政策は進まないよ」といった、保守層に人気があり、党内での孤立がたびたび々報じられている高市早苗議員を意識したようなものもあった。

とくに「やっぱり仲間がいないと」にはイジメに近いものを感じるが、その理由を説明する前にこれまでの進次郎氏の歩みを簡単に振り返りたい。

父が元総理大臣の小泉純一郎氏である進次郎氏は、純粋な世襲議員である。父の引退とともに地盤を引き継いだサラブレッドで、初当選当初から将来の総理などと持ち上げられてきた。大手メディアの政治部記者もそうした扱いを進次郎氏にしてきた。

だが、急に持て囃されたものだからどうしても中身がついてこない。

初めて進次郎氏の”本質”の部分で話題を呼んだのは、2019年に環境大臣として訪れたニューヨークでのことだろう。

温暖化対策サミットや関連イベントに出席した進次郎氏は「気候変動という大きな問題は楽しく、クールで、セクシーでなければならない」と発言。海外メディアから「何の具体策もない」と批判されるほど、記者とのかみ合わない中身のないやりとりが続いた。

政治部があえて見過ごしてきた進次郎の残念さ

当時は牛のげっぷに含まれるメタンガスが地球温暖化につながるとされており、欧米では環境問題への取り組みの一環として牛肉をなるべく食べない「ミートレス」の運動が行なわれていた。にもかかわらず、進次郎氏はニューヨークでステーキを食べるなど、頭を抱えてしまうような外遊であった。

ちなみにこの話が日本でここまで大きな話題となったのは、同行した記者の中に政治部ではなく、環境問題を取材する社会部の記者も交じっていたからとされる。政局動向ばかり気にし、政治家のご機嫌取りのような政治部記者だけではここまで問題を掘り下げられなかったであろう。

進次郎氏は言っているようで何も言っていない空疎な発言スタイル、いわゆる「進次郎構文」でも話題を呼んだ。「今のままではいけないと思います。だからこそ、日本は今のままではいけないと思っています」といった具合のものだ。

それでも進次郎氏なりに、ここまで自民党内で着実にプレゼンスを高めてきた。そうして迎えたのが前回、2024年総裁選だった。

事前報道では進次郎氏の優勢が伝えられてきたが、国民に対して政策を自分のメッセージとして伝えられない進次郎氏には限界があった。