50代を目前に感じる人間関係の変化
実際に、50代を目前に控え、「とげとげ。」さん自身も30~40代前半のときとの人間関係の変化を実感しているという。
「子育て卒業と同時に、人や地域との繋がりもなくなっていくんですが、その一方で、中年でも繋がりがある人って楽しそうなんです。趣味で新しい人間関係を構築することもあれば、子育てに追われて疎遠になっていた過去の友人とまた別の形で新たな人間関係を始められたというケースもあります。
30~40代前半の頃は独身、既婚者、子持ち――、それぞれの違う立場が羨ましくて、劣等感を抱えて、お互い生き辛さを抱えている。でも年齢をある程度超えていくと、自分の状況を受け入れつつ、お互いの背景が見えることで、また近づくことができたりもします」
そんな40代後半から50代への人間関係の変化も描かれる今作だが、改めて作品に込めた想いと読者に伝えたいメッセージを聞いてみた。
「年齢を重ねることでの喪失感や虚無感はあるけど、これまで培ってきた経験や繋がりは確実に自分自身の中にあると思います。それをどう生かし、どう繋げていくかで、50歳から先の人生、新たな自分なりの生き方や人間関係を築いていってほしいです」
「空の巣症候群」は決して特別な人だけのものではない。子どもが家を出たあとに訪れる“空白の時間”。それは喪失ではなく、新しい自分を見つけるきっかけになるかもしれない。
取材・文/木下未希