パリジェンヌは決して「ながら食べ」をしない

驚いたことに、ランチは1時間半、時には2時間続きます。女子が集まるとおしゃべりが絶えません。耳を傾けていると、愚痴もあれば、うわさ話もあります。家庭内の不和の話もあれば、恋愛話もあります。

どうやら、ランチの時間はパリジェンヌにとって、ストレス解消に欠かすことができない、大切な時間であるようです。

話は面白いのですが、私は最初のうち、かなり手持ち無沙汰でした。ふと、周りを見てみると、運ばれてきたお皿をあっという間に平らげていたのは私だけです。みんなまだ半分も食べていません。

すかさず、「ジュン、食べるの早過ぎ」というツッコミが飛んできます。もちろんファニーです。

私は言い返すこともできませんでした。言われてみれば私はものすごく食べるのが早いのです。デスクトップの画面から目を離さずに昼食を取る時の私は、すごい勢いで食べていました。

会食中はと言いますと、話に集中しているため、何を食べているかあまり意識せず、口にある物をただ飲み込んでいました。いずれの場合も、「あまり食べた気がしない」という感覚が残る食べ方でした。

ランチのイメージ 写真/Shutterstock
ランチのイメージ 写真/Shutterstock
すべての画像を見る

周りのパリジェンヌを観察していると、ゆっくり噛みながら昼食を楽しんでいます。そして、注文した前菜の出来が良いだの、悪いだの、お肉の焼き加減が最高だの、最悪だの、出てきた料理の評価をしています。

更には、ここはシェフが最近変わって美味しくなっただの、不味くなっただの、レストランの批評も欠かしません。つまり、私から見れば、かなり「意識的に食べている」のです。

忙しくてなかなか時間がとれず、仕事をしながらランチをすませたり、本や新聞、スマホを見ながら食事をしていませんか? その結果、「食べた気がしない」という不思議な感覚に囚われたことはありませんか? 「ながら食べ」をすると、なかなか満腹感を得ることができません。

パリジェンヌは決して「ながら食べ」をしません。食事に時間を取り、そして食べることに専念します。食事中は食べているもの、その食事を作ってくれた人、そしてそこから得られる快楽に意識を集中させているのです。

それはなぜかといえば、単純に食を愉しむためです。食は体のためだけではなく、心の活性剤になることをパリジェンヌはよく心得ているのです。

同僚とランチをするようになってからというもの、私は「ながら食べ」をやめることを心掛けました。早食いがすぐに治ったわけではありません。

けれども、太らないために「何を食べるか」ということに執着していた私が、「どう食べるか」ということに意識をシフトするようになったのです。それはとても大きな収穫でした。

無理やり連れ出してくれたファニーに感謝しなければなりません。

#2に続く

文/藤原淳 写真/Shutterstock

パリジェンヌはダイエットがお嫌い
藤原淳
パリジェンヌはダイエットがお嫌い
2025/7/16
1,540円(税込)
240ページ
ISBN: 978-4478121894
「無理なダイエットをしても老けるだけよ」 パリジェンヌたちが実践しているライフスタイルや食習慣とは何か?
体重計を使わないパリジェンヌがよく使う驚きの手段 、そして今すぐやめるべき食習慣、さらには自分らしくいるための「パリジェンヌ20の神習慣」を紹介!
amazon