カスハラによって跳ね返ってくるブーメラン

カスハラは、やる側にとっては「逆らえない相手に言いたいことをぶつけて、すっきりする」程度の行為かもしれない。しかし、まぎれもなく働く人に対する悪質な加害行為である。さらに、立場が弱くなりがちな外国人に対して行なうなど絶対にしてはいけないことだ。

また、外国人店員にカスハラを続けると、いずれ自らに不利益として跳ね返ってくるということも認識するべきだ。具体的には、次のような内容が典型例である。

①利便性・安全性の低下
コンビニは以前から、留学生のアルバイト先として人気がある。清潔な職場環境で働けることに加え、日本語や日本文化を実地で学べる点が魅力とされている。一定レベルの日本語力は求められるが、「一度はコンビニで働いてみたい」と考える留学生は少なくない。

しかし、カスハラを受けることが増えれば、しだいにアルバイト先としての魅力は失われていく。このあたりの実情について、都内の専門学校に通うネパール人留学生のスニルさん(23)に話を聞いた。

「深夜のコンビニでアルバイトをしていますが、変なお客さんが本当に多いです。酔っ払いに大声で怒鳴られたことも何度かありました。ネパールの悪口を言われたときは、本気でケンカになりそうでした。正直、こんなひどいことを言われるなら辞めようと思ったこともあります」

深夜のコンビニは、もはや外国人店員なしでは成り立たない。経済産業省の調査でも、深夜勤務を経験した従業員の半数以上が、「今後は働きたくない」と答えている。省人化が進んでいるとはいえ、もし留学生アルバイトまで敬遠するようになれば、24時間営業を続けられない店も出てくるだろう。

結局のところ、カスハラ行為は巡り巡って、自らの生活の利便性や安全性を損なう結果を招いてしまうのである。

②サービスの質の低下
人が定着せず、つねにスタッフが入れ替わるような状況では、サービスの質は安定しない。教育が行き届かないまま新人が店頭に立てば、ミスやトラブルが増え、結果として利用者の不満や負担を増大させる。

一方で、外国人店員の多くは日本語力こそ十分ではないものの、接客態度が悪いわけではない。むしろ日本文化を学ぶ目的で接客業に就いている面もあり、より良いサービスを身につけようとする姿勢が強い。

皮肉なことに、「良いサービス」を求めて行なったカスハラ行為が、かえってサービス意欲の高い店員を辞めさせ、結局は自らの快適さを損なうことになるのである。

③商品価格の上昇
人手不足が深刻化すれば、店は人材を確保するために時給を引き上げざるを得ない。人件費の上昇は必然的にコストを押し上げ、最終的には商品価格に転嫁される。

外国人店員を排除しようとする行為は、結果的に利用者の負担を増やし、家計をじわじわと圧迫する。カスハラをする人にとっても、それは生活コストの上昇として自らに降りかかってくるだろう。

写真はイメージです
写真はイメージです