カスハラは社会全体の活力を削ぐ行為
④地域の安全性の低下
深夜のコンビニは、防犯効果を高める社会的役割も担っている。2024年に日本フランチャイズチェーン協会が公表した資料によると、女性のコンビニへの駆け込みは4076店、延べ5497回に達し、その約半数が23時から5時台の深夜時間帯に発生していたという。
そのため24時間営業を維持できない店が増えれば、地域の防犯体制は弱まり、治安悪化のリスクが高まる。とくに住宅街や地方都市では、その影響は大きい。結果として、カスハラをした本人やその家族の安心・安全が損なわれてしまうのだ。
⑤地域の経済活動の弱体化
いまの時代、ネガティブな光景はSNSを通じてまたたく間に世界へ広がる。実際、数年前には、ある建設会社で起こったベトナム人技能実習生への暴力行為が映像で拡散し、国際社会から厳しい視線を浴びることになった。
同じように、外国人店員へのカスハラ映像が広がれば、「日本は外国人に冷たい国だ」というレッテルを貼られかねない。そのようなイメージが根づけば、留学や観光先として日本を選ぶ人は確実に減る。その結果、人手不足はますます深刻化し、観光地の活気も失われていく。
つまり、カスハラは一店舗の問題にとどまらない。巡り巡って、自らの地域の経済活動を弱めるブーメランとなって返ってくるのだ。
外国人店員へのカスハラは、許されない加害行為であるだけでなく、自分たちの暮らしを不便にし、社会の活力を削ぐ結果を招いてしまう。人手不足のいま、彼らが私たちの日常を支えてくれる担い手であることを認識し、それに感謝しなくてはいけない。
すべてを日本人と同じように求めるのではなく、「多少の違いはあっても受け入れる」姿勢こそが大切だろう。
取材・文/千葉祐大 写真/Shutterstock