全国郵便局長会の支持を取りつけようと躍起に 

郵便局の行方を左右する大きな流れの一つに、自民党の総裁選がある。今回は国会議員と全国の党員によるフルスペック型で争われることが決定した。

各地の郵便局長で構成される全国郵便局長会は、自民党の有力な支持団体だ。この団体の党員票の影響は大きい。その意志が反映された総理が誕生するか、そうでないかで運命が変わる可能性があるのだ。

2024年の総裁選では、林芳正氏が「郵政民営化法を改正して郵政事業を再構築する」とコメントした。また、2025年9月4日の記者会見では点呼の不備があったことに言及し、「総務省が日本郵便に対し再発防止とガバナンスの強化、サービス維持を求めていく」と述べている。ユニバーサルサービスの維持を念頭に置いているのは間違いなさそうだ。

前回の総裁選では、高市早苗氏が「郵便局ネットワークは、何としても守り抜かなければならないと思っています」などとXに投稿している。そして郵政関連法の改正案が必要との認識を示し、「郵便局ネットワーク維持のための財政支援措置の創設」を訴えた。

自民党総裁選に出馬する意向の高市早苗議員(本人SNSより)
自民党総裁選に出馬する意向の高市早苗議員(本人SNSより)
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林氏と高市氏の2名が、全国郵便局長会の支持を取りつけようとしているのは明らかだ。

出方が見えてこないのが、本命の一人と目される小泉進次郎氏だ。父・小泉純一郎氏は郵政民営化を推し進めた中心人物だった。2005年に全国郵便局長会は自民党支持を白紙撤回している。水と油の関係とも言えるが、前回の総裁選で小泉進次郎氏は全国郵便局長会の幹部と都内で面会し、支援を要請した経緯がある。

ユニバーサルサービスの提供を一つの民間企業が担うのは不可能に近い。その維持を必要不可欠なものと位置づけるのであれば、手厚い公的支援が必要になる。当然、国民の理解が必要だ。

民間企業らしくスリム化するのであれば、政治的な思惑とは切り離して徹底的に行なうべきだろう。スタートアップへの投資を通じて、代替サービスを育てるのも一つの手だ。

少なくとも、現在のような状態がユニバーサルサービスを提供する会社のあるべき姿とは言えない。迅速に組織の在り方を改善する総理が求められている。

取材・文/不破聡   写真/shutterstock