650億円の公的支援の大義「ユニバーサルサービス」とは? 

そうした中、自民党は2025年6月に郵便局へ年間650億円の公的支援を行なう方針を固めた。日本郵政株の配当金を原資として想定しているため、国民が身銭を切って支援するわけではない。

しかし、日本郵便の経営が厳しさを増している以上、親会社からの配当収入がいつまでも続く保証はない。無配になった際に郵便局への資金支援を打ち切ることができるのか疑問だ。そもそも、民営化を行なった後に公的支援を行なうこと自体に違和感を覚える。

郵政民営化において、問題の核にあるのが「ユニバーサルサービス」の提供だ。郵政民営化法には、郵便物の引き受けや配達、貯金、保険などを全国で公平に利用できるようにする責務があると定められている。

従って、手紙文化が廃れて請求書などの重要書類がデジタル化されてもなお、郵便局の統廃合が進まない。それが赤字体質になっている主要因だが、スリム化できないために都市部などの郵便局のコスト削減を図らなければならないことになる。それが過酷なノルマとなり、未配達や遅配のような問題を引き起こす。点呼が形骸化していたのも、忙しさが背景にあった。

郵便局の配達員の過労の問題も抱えている
郵便局の配達員の過労の問題も抱えている

郵便局は投資信託を取り扱うようになったが、効率的に営業をかけようと思えばグループ内の顧客リストを拝借したくもなるだろう。要するに経営の効率化が図れない分、現場への負担が増しているのだ。

問題の根はユニバーサルサービスに行きつく。この基本原則があったにもかかわらず、民営化を強引に推し進めたというわけだ。大幅な見直しが必要なタイミングに入っている。