「児童クラブの法的な位置づけが構造的に貧弱」

いっぽうで、制度的な課題もある。放課後児童クラブ運営支援コンサルティングを行なう、一般社団法人あい和学童クラブ運営法人の萩原和也代表理事は次のように指摘する。

「放課後児童クラブは『放課後児童健全育成事業』を実施する場所のことですが、この事業は児童福祉法による法定事業であっても、市町村の『任意事業』であると位置づけられています。

保育所については、保育を必要とする住民が存在する限りにおいて自治体が保育の場を用意する義務があります。いっぽう、放課後児童クラブは『任意』事業ですから、実施するもしないも、市町村が事情に合わせて判断することができます。つまり『やってもやらなくてもいい』ということです。

このように児童クラブの法的な位置づけが構造的に貧弱であることが、自治体や国も、なかなか思い切った児童クラブの拡充や、まして無償化に動かない要因であると考えます」

写真はイメージです(PhotoACより)
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無償化によって保護者の負担は減るものの、運営への影響もあるという。

「児童クラブの利用者の経済的負担が軽減されることは歓迎ですが、無償化によって児童クラブで行われる健全育成事業の質が損なわれてはなりません。有能な職員を確保するには、当然ながらその専門的な職務に応じた賃金設定が必要です。

しかし、無償化によって自治体が児童クラブに対して割り当てる予算の総額に影響が出るとしたら、真っ先に影響を受けるのは職員の人件費です。児童クラブ利用者の経済的負担は、きめ細やかな応能負担の徹底でもカバーできます。そのほうが、長い目で見れば安定した児童クラブ事業が実現できると考えます」

写真はイメージです(PhotoACより)
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さらに、今後の学童クラブの安定的な発展のためには構造的な改革も必要だという。

「児童クラブは質と量の双方において、まだまだ貧弱な構造です。児童クラブで配置が求められている『放課後児童支援員』という都道府県資格は取得のハードルが低く、本来の児童クラブにて求められる職務の専門性を裏打ちするような資格とはなっていません。

資格1つとっても位置づけや構造が弱いのです。児童クラブの世界が今後、安定して発展していくためには、現在の法定任意事業から、保育所と同等の児童福祉施設へと位置づけを変えることが最重要です」

子育て世帯の経済的負担を軽くし、人口減少対策の切り札としても注目される学童クラブの無償化だが、現場の負担などの課題もある。今後は「子育て家庭に選ばれる自治体づくり」と「持続可能な学童運営」の両立が問われていくことになりそうだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班