「麗子のプライベートの巻」(ジャンプ・コミックス第96巻収録)
今回は、頼みごとをしておきながら約束をすっぽかした両さんに麗子が激怒し強烈なビンタを見舞うという、衝撃的なシーンではじまるお話をお届けする。
麗子の怒りぶりを不思議に思った両さんと中川が麗子のあとをつけてみると、彼女の意外な一面を目にすることに……。
さて、麗子の実家は、兵庫県神戸市に本拠を構える貿易商だ。派出所での勤めを終えた麗子は、日本各地を飛び回りながら企業家としての激務をこなすと、その足で神戸へと向かう。実家を訪れるのかと思いきや、彼女の行き先は神戸某所の避難所だった。
そこには麗子の父・秋本飛飛丸(ぴゅんぴゅんまる)も訪れていた。家族再会の挨拶もそこそこに秋本父娘が取った行動は……?
本作は、阪神・淡路大震災が発生した1995年の9月に「週刊少年ジャンプ」40号に描かれている。原稿が描かれたのは、震災の発生から半年ほど経った7月から8月にかけてだろう。
ちなみに、この災害の発生後、人々の間で高まった意識がある。
まずは、家具や大型家電を動かないように固定する、非常用の水や生活必需品の備蓄といった「自助的な防災意識」だ。
そして、人々が助け合い、困っている人に手を差し伸べる「共助」の精神。同震災の発生後、たくさんのボランティアが被災地を支援するために集い、募金活動も盛んになった。はじめは個人ボランティアが、やがて被災者の要望とボランティアの活動の間に生じたギャップを縮めるための聞き取りや調整なども含めた組織的ボランティアによる支援が盛んになっていったという。
麗子と飛飛丸は、超がつくほどのセレブだ。自らがトップに立って金と人脈にものをいわせたボランティア活動も可能だっただろうし、現代ならその様子をSNSで拡散して承認欲求を満たしたり自分の会社のイメージアップに利用したりすることもできただろう。だが2人はそんなことは考えもせず、被災者・被災地に寄り添いながら黙々とボランティア活動に務めていた。そんな2人の姿勢を目にした両さんは、何を思ったのだろうか?
それでは次のページから、麗子の多忙すぎる一日を追って、震災後の神戸へと目を向けてみてください!!