お見合い婚社会でマッチングアプリ活用へ

インド人の80%以上がお見合い結婚をしている。

この国に赴任したばかりのころ、地元紙が報じていた記事に目がとまった。14億人もの人口がいるインドの人々は、どうやってパートナーを探し、家庭を築いていくのだろうか。

試しに、私と年齢が変わらない40代の男性運転手になれ初めを聞くと、「親戚が紹介してくれた女性とお見合い結婚をした」「結婚式の日まで、その女性と会ったこともなかった」と言うではないか。

インドのカップル(写真はイメージです)
インドのカップル(写真はイメージです)
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多くの場合、親や親戚が必死になって良き相手を探し回ってきた。手広く相手を募ろうと、子どものプロフィールを新聞広告に載せて募集する人までいる。

とは言え、首都のニューデリーや商業都市のムンバイ(旧ボンベイ)に行くと、若い男女がショッピングモールで買い物をする姿もみかけるし、自由恋愛を楽しむ若者も増えてきている。

そんな社会の変化も後押ししてか、この国ならではのマッチングアプリの人気が高まっていると聞き、当事者に話を聞くことにした。

まず話を聞けたのは、南インドの中心都市チェンナイの通信会社で働くハリハランさん(30)。2022年11月、スマホで結婚相手を探そうとマッチングアプリに登録した。

5カ月後、同じインド南部の別の街に住んでいたシータ・サティシュさん(26)とつながった。ハリハランさんは「彼女とは初めて会ったように思えなかった。(結婚するのが)運命のように感じた」。サティシュさんも「私と共通の趣味があり、彼の偉ぶらない感じにもひかれた」。

ここから、2人だけで愛を育むのかと思いきや、お互いの親も一緒になって電話やビデオ通話でやりとりをしたという。しばらくして初対面を果たし、その数日後には婚約。アプリでつながってから半年もたたないその年の9月に、結婚式をあげた。

2人は同じ思いを口にした。「親戚や友人たちから紹介される一般的なお見合い婚だと、相手が好みじゃなくても断りにくい。ネット上にはうその情報を入力する人もいたけど、自分の好みの条件を事前に選択できるのが良かった」

親の顔の広さがものを言った時代から、子どもたちの意思や最新のサービスを使いこなせるかが相手探しの重要なカギになってきているということだ。