結婚に際して根強く残るカースト
2人が使ったアプリを開発したのは、チェンナイの企業「マトゥリモニー・コム」を創設したムルガベルさん(52)。コンサルタントとして米国で働いていた00年に、出身地域や言語が同じインド人コミュニティーの交流を図ろうと、結婚相手を探すサービスなどを立ち上げた。
スマホが普及するにつれて、20代の男女の間で利用者が急増。「マトゥリモニー」の年間登録者は約800万人に上るという。
アプリでは、お互いの名前や写真、年齢、身長、職業、学歴といった基本情報を入力する。ここまでなら、日本のサービスとさほど変わらない。
ただ、この国ならではの選択肢も数多い。
例えば、相手がベジタリアン(菜食主義者)かどうか。インドでは、ベジタリアンが数億人規模に達すると言われており、重要な情報なのだ。
伝統的な身分制度であるカーストは、今も根強く意識されている。カーストによる差別は憲法で禁止されているが、名字でカーストが分かる場合もあり、地方を中心に我が子を同じカーストの相手と結婚させたいと望む親はまだまだ多い。
インドには、バラモン(司祭)、クシャトリア(王侯・戦士)、バイシャ(庶民)、シュードラ(隷属民)という古代の階級制度を起源とする身分に加え、「カースト外」として位置づけられ、かつては不可触民と呼ばれたダリットの人々もいる。
さらに、伝統的に引き継がれてきた職業や地縁、血縁などをもとにしたジャーティ(生まれ・出自)による分類もされており、その数は2000〜3000近くあると言われる。
「マトゥリモニー」では800以上もの選択肢から自分のカーストを選べるようになっているが、利用者から「自分のカーストが選択肢にない」という連絡が来て、付け加えることもあるという。
言葉の壁や宗教の違いもこの国ではつきまとう。