道路に穴があくのだとすれば、税の使い道が間違っているだけにすぎない
ガソリン税を含めた自動車関連税の減税を主張すると、よく「税収不足になり道路に穴があいてもいいのか!」という指摘が返ってくる。
しかし、クルマ関連税の税収は、消費税も含めると年間約9兆円にも上る。一方、道路関連支出は約8兆円である。我々は1兆円も多く税を取られているのである。
したがって、道路に穴があくのだとすれば、それは税収不足のせいではなく、税金の使い道が間違っているだけにすぎない。むしろ、過剰な課税が家計を圧迫し、地域経済に悪影響を及ぼしている現状をこそ問題視すべきである。
燃料税の削減は、家計の支援にとどまらず、経済全体にも好影響を及ぼす。物流コストが削減され、商品の価格が低下する可能性がある。これにより、消費者の購買力が向上し、結果として経済活動が活発化する効果が期待できる。
また、税負担の軽減は労働市場の柔軟性を高め、労働者がより自由に職を選べる環境を整えることにもつながる。低賃金労働者にとって、交通費の高騰が就労機会を狭める現実は見過ごせない。
貧困層に過度な負担を強いている現状
税収の減少を懸念する意見も根強いが、イギリスの事例では、税率を下げることで税収が減少するどころか、不正行為や密輸を減らし、経済活動の活性化を通じて税収を補う可能性が示されている。
日本でも同様の効果が期待できる。特に税負担の軽減によって可処分所得が増えれば、消費が拡大し、経済全体の改善にもつながると考えられる。国民の生活が安定すれば、結果として政府の税収も安定するという好循環を形成することができる。
結論として、日本政府はイギリスの事例を参考に、燃料税を含む間接税の減税を真剣に検討すべきである。減税は貧困層への直接的な支援であると同時に、経済全体の活性化にもつながる政策である。
現在の税制度が逆進的であり、貧困層に過度な負担を強いている現状を直視し、速やかに税負担の軽減を実施するべきである。生活基盤を守るために、税の再設計が求められている。
文/小倉健一
※1"Aggressively Regressive: The ‘Sin Taxes’ That Make the Poor Poorer"(『積極的な逆進性──貧乏人をより貧しくする「罪税」』、クリストファー・スノードン著、イギリス経済問題研究所、2013年)