2年半の間に6万3240品目も値上げ

1ドル=150円で計算すると原油1バレルは1万2000円だが、これが1ドル=135円になれば1万800円、1ドル=125円になれば1万円になる。数字にして見るとあらためて円高放置が物価高を招いているかがわかる。

2023年~2025年7月のわずか2年半の間に何と6万3240品目も値上げをしていて、中には繰り返し値上げしているものも目立つ。

外食産業や中小零細企業は原材料高と光熱費高に利益も圧迫され、人件費を充分に捻出できなくなるのも無理はない。

実際、この2年半で2万4672件もの法人が倒産に追い込まれている。特に2025年は7月までで5800件を超えており、年間で1万件を超える見通しになっているのだ。

日本の給与所得者のうち、約35%~40%に当たる1700万人~1900万人は年収300万円以下だ。だが、この統計自体が2022年分の国税庁の数字なので上記した倒産件数や物価高騰を考慮すると、さらに300万円以下の人が多くなっているのかは容易に想像できる。

円安下で賃金が上がっていない日本人がいかに貧乏になってしまったのか、おわかりいただけたのではないか。

トランプ関税で石破首相が「国益を守った」は本当か

トランプ大統領
トランプ大統領

 日本の政治家というのは目の前の利益と短絡的なパフォーマンスを重視してばかりで「木を見て森を見ていない」ように思えてならない。

懸案になっていたトランプ関税でも、日本は15%で合意できて国益を守ったと石破首相は胸を張り、ときおり含み笑いを浮かべながら会見していたが、本当にそうだろうか。私にはまったくそうとは思えない。

たしかにこれが株式市場で評価された背景には、日本の自動車産業の関税回避などの短期的成果があるが、冷静に考えれば、その代わりに米国との交渉の中で防衛装備品の大量購入を事実上“交換条件”として受け入れているわけで、結果として日本の対米防衛装備輸入は激増することになるだろう。

そもそもトランプ政権下では「日本にもっと米国製兵器を買わせる」ことが明確な要求としてあったのだから、これはトランプ大統領の思惑通りだといえる。

また、日本サイドからしても対米防衛装備品輸入の激増で、防衛費の財源確保が将来的な増税圧力になるのは間違いない。