「じじいはもう引っ込めという、いろんない言われ方もしましたけれど…」
翌20日の投開票日。開票センターとなった東京都医師会館には、夕刻からメディアや支援者らが集まり始めたが、開票が始まった午後8時には会場の空気が一気に冷え込んだ。
「自公の過半数維持は困難」。テレビに劣勢を示すテロップが映し出されると、緑のポロシャツを着た陣営スタッフからは「あ~」と悲鳴にも似たため息が漏れた。
時間を追うごとに各選挙区での自公の劣勢が伝えられると、会場は徐々に弛緩したムードに包まれていく。午後10時、敗北が決定的になった石破首相がNHKのインタビューに応じる段になって、ようやく武見氏が姿を現した。
“宰相”の敗戦の弁を見届けると、ようやく後援会長を務める東京都医師会の尾崎治夫会長がマイクを握った。
「5年先、10年先を見据えた政策というのはどういうことなのかいうことを考えた時に、やはり武見敬三候補がですね、活力ある健康長寿社会ということで色々な提言をされてきました。
私はそこにやはり東京のこれからのですね、やるべき姿、それから私どもの医療介護福祉の中でもそれをやはり一緒に考えているということが、この東京にはぜひ必要ではないかということで、後援会の会長として武見敬三候補を支えてきました」と切り出した尾崎氏。
「政治とカネ」の問題やウクライナ情勢、国民生活を苦しめる物価高など、自民に激しい逆風が吹く状況を踏まえ、「なかなか今の自民党の状況とか、いろんなこと考えると、なかなか武見候補のですね。訴えが通じていかなかったのかなって。それがこの厳しい状況に繋がったということにあると思います」と唇をかんだ。
一方で、武見氏と同年齢だという尾崎氏は、「高齢議員の居座り」との批判を受けがちであることを踏まえ、「じじいはもう引っ込めという、いろんな言われ方もしましたけれど。私は武見と共にですね。国政にそういう議員としては、もしかしたら叶わないかもしれませんが。2人でですね、また東京のいろんなことを見据えて、仮にダメだとしても頑張っていきたいという風に思ってますから」と未練がましい言葉も漏らした。
敗色がいよいよ濃厚になってくる中、居並ぶ支援者らを前に武見氏が最後の挨拶に立った。「結果が出ているわけではございませんが」と前置きしつつも、それは事実上の敗戦の弁となった。