組織の結束より自分という個を優先
こうした違いについてリクルートマネジメントソリューションズの担当者は「10年前は組織に適応し、一致団結して目標を達成し、成果を上げること、同時に社員同士が切磋琢磨し、競争し合う職場が自分も成長していくことにつながると考えていた。
しかし今は我慢して組織にあわせるのではなく、個性を尊重し合い、それぞれの強みを活かして助け合う組織を好む傾向に変わっている。上司も情熱的で厳しい上司ではなく、一人ひとりの個を尊重し、丁寧に指導し、ほめてあげる上司を望むようになっている」と語る。
組織の結束より自分という個を優先し、しかも自分の成長につながる丁寧な指導を求めるというのは10年前とは真逆の価値観であり、Z世代の特徴がよく表れている。
しかも2013年に入社した人が今では先輩や上司の世代でもある。当然ながらZ世代とミドル世代とでは価値観がぶつかることが多い。
今の若手「だったら先に言ってくださいよ!」
前出の担当者は「以前はとりあえずやらせて、何か失敗したら、どうして失敗したのかを考えさせる指導法だった。しかし今の若手は『だったら先に言ってくださいよ!』という思いが強い」と語る。
仕事を指示する場合もなぜそれをやるのかという納得感が大事であり、昔ながらの「とりあえずやらせて失敗したら教える」では腹落ちするどころか逆に反発さえ招くことになる。
また、昔であれば「そんなこともできないのか」「学校で習わなかったのか」という言葉がつい出がちだったが、今では禁句となりつつある。
部下がミスしたら「二度とするなよ、ではなく、なぜやってはいけないのか、その理由をちゃんとフィードバックする」(担当者)必要があり、それができなければ離職を招くリスクも高くなる。
長年Z世代を見てきた文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所の平野恵子所長は
「嫌なこと、自分には無理と思ったら、『ファーストキャリアだし、辞めてもいいや』という感覚はZ世代のほぼ全員が持っているのではないか。
例えば学生時代に在宅でのオンライン生活を長く強いられたため、社会人になって惰性的に対面で何かをやらせると、『これってわざわざ出社して対面でやる必要ある?』とか、『タイパが悪いのでは』といった違う価値観を持っている。なので働き方のスタイルにギャップを感じたら転職を考えはじめる可能性はある」と指摘する。
人手不足の時代に若手に辞められたら会社も困る。しかし、仕事に対する考え方や価値観の異なるZ世代とのコミュニケーションを円滑にするには、ミドルの側の対話力、言語化力が問われることになる。
だが、そうした能力を持つ管理職は2割もいないという声もある。そうなるとミドルの不満や反発もさらに高まり、分断が拡大することになる。