逆境をはね返した堂安の成長
ただ、森保監督は鎌田の力をすべて引き出しているとは言えない。端的に言って、インサイドハーフではなくトップ下の起用が理想だろう。現状の4-3-3のシステムにはめ込む起用では、窮屈さが見える。
「ビッグクラブと戦っているし、そこの戦い方はいくらでも調整できます」
そう語る鎌田は、意外なほど二枚腰三枚腰のある選手である。本人が語るようにインサイドハーフもできるが、トップ下でも守備はできるし、何より高い位置にいた方が相手に怖さを与えられる。チュニジア戦も、高い位置でボールを持つと一瞬で守備網を切り裂くパスを出した。
鎌田は傑出したオールラウンダーで、監督の戦術でがんじがらめにすべきではない。ELでチーム得点王になっているように、自らゴールを決められる。FCバルセロナ戦では世界最高のペドリを守備で封じ、チームに貢献。一方で真骨頂はチームメイトのプレーを輝かせる才能で、フランクフルトでもセルビア代表MFフィリップ・コスティッチとの連係はEL優勝のハイライトだ。
鎌田がピッチに立つことで、堂安、三苫薫、上田綺世、久保建英にも輝きを解放させるはずだが…。
もう一人、序列のポイントを稼いだのは堂安だろう。
堂安も鎌田同様、3月の代表戦では招集外だった。それが今回はパラグアイ、ガーナ戦で先発の座を得た。鎌田、山根視来の得点アシストだけでなく、自ら積極的にシュートを放ち、逆サイドからのクロスにも入り込み、縦横無尽の働き。PK失敗はご愛嬌としても、強烈な存在感を見せた。
堂安は右サイドで、レギュラー候補筆頭の伊東純也とは異質のプレーを見せられる。左利きで中に切り込み、コンビネーションを使って崩せるし、際どいシュートもある。サイドバックやインサイドハーフ、逆サイドのウィングとの連係も良く、同じ左利きで東京五輪世代の久保とのコンビは一つの武器だろう。W杯で同組の強豪ドイツ、スペインを相手でも、一定のダメージを与えられるはずだ。
「守備の強度は、この2年間で高くなった」
堂安が語ったように、守っても強さを見せた。プレスバックするだけでなく、ポジション的優位を保ってパスカットにも成功。簡単に相手に攻め込ませていない。そもそも所属するPSVアイントホーフェンはクラブの格でいえば南野拓実のリバプール、冨安健洋のアーセナルに次ぐ存在で、そこで定位置を取ってのシーズン11得点(カップ戦を含めて)は”代表入りの保証書” と言っていい。