参政党と他のSNSで伸びた新党との違い 

そのため、党員を獲得して得られる党費を使って新たな党員を確保するための拡大活動が容易になる環境があったのだ。これは米国で既に起きていたことであり、ネットを通じた運動員・資金集めは米国の政治では既に主流のやり方になっている。

参政党の動員力・資金力を見て「背後に大きな組織がついているに違いない」という陰謀論を垂れ流す既存政党関係者もいるが、それは自分たちがそのような政治をやってきただけのことだ。

筆者は同党の初期段階に関わっていた時、個人党員からの膨大な党費がSNSを通じて同党に入る様を鮮明に記憶している。その時、筆者は参政党が後々大きな組織になることを確信した。

さらに、参政党が他のSNSで伸びた新党との違いは、その動員力と資金力を組織構築と地域活動に投入した点にある。日本保守党やNHK党などの類似組織は、地域における地道な活動を軽視しているように見える(これは元々の政党の設計コンセプトや、党首の特性の違いによるものだろう)。

そのため、同じようにSNSを主軸とした政党であっても、時間とともに政党としての足腰に差が出ることは自明であった。参政党はいまや都議も含めた地方議員100名以上、全小選挙区に支部を作る巨大な組織構造を築いている。他の政党とはまるで異質の組織として認識するべきだ。

「党員が共有できる物語」を作る腕前 

それらの土台を築いてきたのは、参政党代表の神谷宗幣氏の手腕によるが、実際に参政党の党勢を支えているのは、一人ひとりの党員である。これは政党活動が本質的に「議員の私事」に過ぎない既存政党と「党員主体で作り上げられた」参政党との違いだ。

神谷氏はトンデモ陰謀論のような発言をすることもあるが、基本的に「党員が共有できる物語」を作る腕前に非常に優れており、優れた営業統括マンでもある。そのため、一定の資金力があり人間がまとまって存在している対象を取り込んでいくこと、に躊躇はない。

演説する参政党の神谷代表(写真/共同通信社)
演説する参政党の神谷代表(写真/共同通信社)

その対象が、初期段階では、陰謀論、オーガニック、反ワクだったに過ぎず、排外主義的なムードが高まっている現在では、「日本人ファースト」という言葉になっているだけのことだろう。

これは神谷氏自身の信念というよりは、その都度新規に入ってきそうな党員の思いをくみ上げる党員主体政党の特性としては当然の帰結とも言える。