廃止した企業、続ける企業、双方の思いは  

実際にお中元を廃止した企業にたずねてみても、こうした点は意識しているようだった。

「本来の目的から外れて過大になってしまうケースもあり、また、形骸化しているという社内の考えと、経費削減の効果を勘案の上、控えることになりました」と答えてくれたのは、創業101年の総合酒類メーカー・オエノンホールディングスの担当者だ。

同社は世間にやや先駆ける形で、2021年からお中元を廃止している。理由は「儀礼簡略化や虚礼廃止の流れ」「自然環境に対する意識の高まり」などとしているが、具体的に聞いたところ、担当者は前述の回答をしてくれた。

お中元・お歳暮や年賀状の取りやめを知らせるオエノングループの文書(同社HPより)
お中元・お歳暮や年賀状の取りやめを知らせるオエノングループの文書(同社HPより)

廃止によって取引先との関係がどうなったかについては、「廃止前後で取引関係の変化や影響は見られませんでした」とのこと。古くからの商慣習が残りがちな老舗でも影響がないあたり、やはりお中元が儀礼として形骸化していたことがうかがえるだろう。

一方で、お中元文化の衰退を寂しく感じる企業も。奈良県にある1950年創業の老舗ランドセル工房・カザマランドセルだ。

同社は取引先だけでなく社員にもお中元を配っており、専務の風間智紀氏は、「従事していただいている日頃の感謝で、昔からやっています。廃止したらみんな残念に思うでしょうし、なるべく続けていきたいです」と優しさをのぞかせる。

他方で、取引先からは「来年からは結構です」などと言われることが増えてきたそうだ。

カザマランドセル【公式】Xより
カザマランドセル【公式】Xより

「取引先は30軒くらいで、主に飲食物を贈らせていただいています。『お昼にみんなで食べられて便利でした!』なんてお喜びの言葉をいただくこともありまして、いただくのはもちろん贈るのも嬉しいですね。なるべく続けていきたいですが、近年は廃止されるところがだいぶ増えました。

合理化の面からは仕方ありませんが、こういう日本独特の文化が失われるのは寂しいですよね。ウチから『やめます』というのは考えていませんが、『結構です』と言われているのに贈るわけにはいかないので、お相手次第というところはあります」(風間氏)