わずか5年で1000億円以上減少の可能性
近年の日本社会は、合理性の観点などからさまざまな風習が見直されている。昨年末には、年賀状を取りやめる「年賀状じまい」が盛んに報じられたことも記憶に新しい。
そんななか、お中元も例外ではなく、株式会社矢野経済研究所「ギフト市場に関する調査(2024年)」(2025年3月14日発表)によると、市場規模は右肩下がりだ。
同資料の「国内中元・歳暮市場規模推移」を見ると、2019年に7210億円あったお中元の小売金額は、2023年に同6560億円まで減少。昨年は、見込値ではあるものの同6190億円に落ち込み、今年は予測値で同5800億円と6000億台割れも視野に入っている。
このデータと相関するがごとく、近年、企業などでは「虚礼の廃止」と銘打ったお中元・お歳暮の取りやめが相次いでいる。今年も大手製薬会社や地方の中小企業などが続々とHP上で表明しており、規模や業種を問わずに広がっている状況だ。
各社が掲載している文書を見ると、廃止理由は「自然環境への配慮」「時世に沿って」などでおおむね共通しているが、具体的にはどういった判断なのか。
一般社団法人ギフト研究所の専務理事・荒木淳一郎氏にたずねたところ、「お中元やお歳暮が形式的なものと捉えられ、世代によっては儀礼ギフトの習慣自体がわずらわしく、必要性を感じなくなってきた。特に若い年代が仕事と生活を切り離して考えることも、儀礼的なお中元・お歳暮が減少していることに関係しているでしょう」と分析してくれた。
また、こうした仕事観の変化以外にも、ここ最近のホットワードである“コンプライアンス”が影響しているという。
「コンプライアンス意識の高まりは、廃止の大きな理由だと考えています。贈答品は公正公平な取引に少なからず影響する場合があり、癒着などの不正にもつながりかねません」(荒木氏)