世界が滅亡する前に彼女を作りたい……!
「ノストラダムスの予言を信じて会社を辞めました」――そう話すのは、1999年当時20代後半で営業職だったCさんだ。
予言をきっかけに上司に暴言を吐き、そのまま辞表を提出したという。
「ちょうどそのころ、職場の理不尽さに限界が来ていて、なかば予言を言い訳にして、自分の決断に勢いをつけて会社を辞めることにしました。予言を信じていたほうが救われるような感覚が、当時の自分にはあったんです」
Cさんはその後、実家に帰り休養し、「滅亡しなかった地球」を目の当たりにしたあとにボチボチ仕事を探し、今は安定した生活を送っているという。
一方で、思春期ならではのエピソードもある。
「どうせ世界が終わるなら、気持ちだけでも伝えたいと思った」――と語るのは、1999年当時中学2年生だったDさん。
終業式から夏休みにかけて、好きだったクラスメイト3人に立て続けに告白したという。
「好きな順に行きました。最初の本命の子でやめておけば普通の告白でしたが、振られた後に、『このままでは彼女もできないまま死んでしまう!』と思ってしまい、ダメなら次、またダメならと告白して、3人目は半分やけくそのような状態でした。結果、全員に振られました」
夏休み明けの9月、Dさんは気まずさを抱えて学校に行くことに。案の定、3人に告白したことはクラス中に広がっていたという。
「 “ノストラダムスを信じて”なんて言えず、ただただ急に3人に告白したヤバいやつという扱いでした。今思えば、予言を信じてしまったと、正直に言ったほうがマシだったと思います。
ただ、そんな理由を言ったら相手が傷つくかも……と、謎の男気もあったんですよね。あとはやっぱり、ノストラダムスを言い訳にして、単純に告白したかったんだと思いますよ」
1999年の“終末の夏”には、終末論をテーマにしたオカルト本や映像作品が売れ、街の書店には関連コーナーが設けられるほどだった。
ネット上でも、当時の異様な盛り上がりを振り返る声が多くあがっている。
〈ノストラダムスの予言を信じて学校辞めたやつ居たけど、あいつ元気かな…〉
〈父、ノストラダムスを信じて、保険も全て解約して全て金に変えて全財産使い果たそう!そして子供2人と心中しよう!と本気言っていたそうで、このコロナで陰謀論にハマらなかったの奇跡だと思う〉
〈笑われるだろうけど、30年前に母はノストラダムスの予言を信じて、関東から九州に移住した。大枚かけて鹿児島にシェルターも作った(今は売っちゃってないけど)〉
さすがに今回は、そこまでの騒ぎとなっていないが、それでも現実の経済や人の行動にまで影響を与えている事実には、驚かされるばかりだ。
取材・文/集英社オンライン編集部