たった10年の歴史でも社会の価値観の変化は目まぐるしい
江戸時代の日本は、男性の同性愛を避ける必要は必ずしもありませんでした。しかし、西洋化が進むと文化はパッケージで輸入されますから、富国強兵とは直接関係のない価値観も含めてごっそり変わっていく。すると、日本人の「当たり前」も変わってしまう。そういうことは、しばしば起こります。
たとえば、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック〈現メタ・プラットフォームズ〉、アマゾン・ドット・コム)など、シリコンバレーの企業が強くなると、その影響で日本企業も「シリコンバレーの文化を取り入れないと負けてしまう」という雰囲気になりました。
それはそうなんですが、ビジネスに直接は関係なさそうな文化、たとえばスーツではなくTシャツにジーンズで仕事をする文化までパッケージで入ってきて、「スーツを着るのはダサい」という価値観が広がったりしました。明治時代に欧米から取り入れた「スーツは格好いいんだ」という価値観を、今度は否定するわけです。
このように、少し長期的な目線に立つだけでも、社会の価値観がコロコロと変わっていることに気づくでしょう。
僕たちの社会の前提になっている「当たり前」なんて、その程度のものなんです。
#2 親が、自分の子供を殺した時代――「命の価値」を歴史から考える はこちらから