性に開放的な女性は「魔女」とされた時代

当時の日本は、資本主義から科学、工業、洋服、食事に至るまで欧米文化を取り入れたのですが、その際にキリスト教的な価値観もくっついてきました。そして「同性愛は悪」ということになったというわけです。

ちょっとわき道にそれます。ここまで、男性の同性愛について書いてきましたが、女性の同性愛についてはどうだったのでしょうか。

実は女性の同性愛は、男性の同性愛に比べて史料や記述がとても少ないんです。歴史的に多くの社会で長い間、女性や子供は性の自己決定が認められてきませんでした。

たとえばヨーロッパでは15~18世紀まで、性に開放的な女性は「魔女」とされ、「魔女狩り」の対象になっていました。第二次世界大戦後、人の性生活についての科学的な研究報告として発表された「キンゼイ・レポート」が登場するまで、欧米では「女性は性欲を持たない」と考えられてきました。

こんな状況だったので、女性の同性愛者について史料を残すのは大変危険なことだったのかもしれません。しかも多くの史料は、男性によって編纂されてきました。「女性は性欲を持たない」という固定観念を持っている男性が、女性の同性愛者についての記述を残せないのは、ある意味で当たり前だったのかもしれませんね。