多くの出会いで変わっていった価値観

妻との印象的なエピソード、「醤油事件」について話してくれた。

「結婚当初、妻が作ってくれた料理に全部醤油をかけちゃってたんです。僕は群馬出身で、僕の田舎では出された料理に醤油をかけて食べるのが普通だったんです。むしろ、醤油をかけたほうが美味しいので、かけて”あげる”という感覚。ある時、出し巻き卵や漬け物や塩鮭など食卓の料理に醤油をかけたら、きゃーって叫ばれて(笑)。

この時、自分が正しいと思っている、良かれと思っていることが、決して相手の正しいことではないと知りましたね」

レコード大賞の司会、ドラマの主役。歌手活動。自分が描いたものは30歳までに全部やってきた。独身時代は自分のビジョンしかなかったけれど、結婚生活を過ごすなかでさまざまな価値観が変わっていく。

「今までは芸能人・中山秀征として、生活をしていたけれど、子どもが生まれるごとに変わっていきましたね。子どもを通して、学校の先生や、地域の人たち、ママ友やパパ友など関わる人も増えていった。

だからか悩み相談の回答も変わっていきました。自分だけの意見じゃなくて、世間はどういう風に考えてるんだろうという目線で見れるようになったのだと思います」

”ヒデちゃん”という愛称で多くの人から親しまれている中山。『THE夜もヒッパレ』(日本テレビ系)では、芸能活動を引退した安室奈美恵からも「ヒデちゃん」と慕われていたのだとか。本人はそのことについてどのように思っているのか。

「いやー、すごく嬉しいよね。あの番組がスタートしたのは30年前だけど、安室ちゃんや、MAX、知念里奈ちゃんとか。みんなが『ヒデちゃん、ヒデちゃん」って呼んでくれて。わかんないことは全部ヒデちゃんに任せればいいやーて感じでしたよ(笑)。

当時は27歳ぐらいだから、みんなにとっては近所の頼れるお兄ちゃんみたいな存在だったんじゃないかな」

頬を緩めながら当時を懐かしむ中山。しかし本人の意思とは反対に、「ヒデちゃん」と呼ばれることに不信感をもっていた人もいたそうだ。

「MCになっていくと『ヒデさんや中山さんって呼ばせたほうがいいんじゃないか』って言う人も出てくるんですよね。『いつまでもヒデちゃんって言われてるようだから中山は軽いんだよ』って言われたりもしてました。親しみやすい愛称で呼ばれないほうが、タレントとしての格が上がるんじゃないかと……。

ただ僕は全くそう思わなくて、ヒデちゃんと呼ばれるほうがやりやすかった。街歩きロケなんかやってると、『ヒデちゃんー!』って子どもから大人まで、いろんな人が声をかけてくれる。そういう距離感のほうが僕には馴染むというか、やりやすかったと思いますね』

懐かしいエピソードに笑顔な中山秀征 撮影/齋藤周造
懐かしいエピソードに笑顔な中山秀征 撮影/齋藤周造
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