「注文を断れなかった」営業禁止後も販売

解除後に店が営業を再開したかどうかは保健所は「確認していない」としている。ただこの営業禁止処分に絡む一連の調査の中で、営業停止期間中にも“ヤミ営業”が行なわれていたことがわかった。そしてさらに問題なのが、その時売られた弁当にもノロウイルスが入っていたことだ。

「仕出し弁当が11人に販売されていたのですが、そのうち9人から、他の事例と同じく下痢や嘔吐の症状が出ており、患者と認定しています」(同担当者)

喜一でつくられたオードブル(店舗の公式SNSより)
喜一でつくられたオードブル(店舗の公式SNSより)

結局店は2月8~14日の間に計43人、2月15~16日の間に9人、衛生教育を受けたあとの2月22~24日の間にも23人と、連続して食中毒を出し続けたことになる。

「営業停止期間中の“ヤミ営業”について富田林保健所は5月28日に食品衛生法違反容疑で府警に告発しており、府警は補充捜査を経て6月16日に3人を逮捕しました。調べに対し博一容疑者は『注文を断れなかった』などと供述しています」(府警担当記者)

同店はSNSで、
「大阪河内長野にて創業33年の歴史を持つ日本料理店、喜一。
季節の食材をふんだんに用いた懐石料理やイベント、法事などの仕出し料理など。
お料理に合わせて、ワイン・ソムリエが厳選したワインを。リーズナブルなものから高級ワインまで多数取り揃えております。」
とPR。上品な日本料理の写真が並んでいる。

逮捕された北野博一容疑者と妻で女将(おかみ)の経子容疑者
逮捕された北野博一容疑者と妻で女将(おかみ)の経子容疑者
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営業停止期間中の“ヤミ営業”に対し、別の地域の保健所関係者は驚きを口にした。

「かなり図々しいですね。営業停止期間なんてふつうせいぜい数日なので“静かに”しているもんです。(人にたとえるなら)“執行猶予中”に同じことをやっていたようなものですから。

ノロウイルスは急性胃腸炎を起こすウイルスで、人の手などを介して二次感染します。そのため、手指や調理器具の洗浄や消毒が重要です。管理が悪いとすぐにこうした食中毒につながるので注意が必要です。今回、続けて起きたということは衛生状態の改善が徹底されなかったということに尽きますが、店の関係者がずっとウイルスを持ち続けていたことも考えられます。ミシュランの星がついていてもいい加減なもんだなとびっくりします」(他地域の保健所関係者)

料理界で誇れる看板を背負っていても、人の健康に直結する問題だけに、築き上げた信用も一瞬で瓦解する。高温多湿の梅雨の時期、食品の衛生管理には細心の注意が求められる。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班