重要な人としてキャッチしてしまう
脳の前頭前皮質(思考の制御を担当する部位)が「これを考えてはいけない」と命令を出せば出すほど、扁桃体(感情と記憶を処理する部位)が、「では、これは重要な情報なのだな」と認識し、その内容を強く記憶しようとします。
前頭前皮質は、私たちの意志による思考のコントロールを担当する部位です。何かを意識的に「考えない」ようにしようとするとき、活発に働きます。活発に働くということは、「これは重要なことなんだ」というシグナルになってしまいます。
扁桃体は、そのシグナルを受け取ると、「重要な情報は見逃してはいけない」という本能的な判断から、かえってその情報に対して敏感になります。
つまり、前頭前皮質が「あの人」に対して意識的な制御を試みれば試みるほど、扁桃体はその対象により敏感に反応してしまうわけです。
この脳のメカニズムが、私たちの日常生活のあらゆる場面に影響しています。
たとえば会議中、「今日は上司の顔を見ないようにしよう」と思うと、かえって視線がその人に向かってしまう。これは、「見ない」という指示を実行するために、脳が上司の存在をつねに監視せざるを得なくなるからです。
「今日の夕食では、義母の話題を出さないようにしよう」
と決意すると、なぜか会話が自然と義母のことに向かっていく。「話題に出さない」という目標を達成するために、脳が義母に関連する話題をつねにチェックし続けているためです。
休日に「今日は課長のことは考えない」と思った途端、課長との会話が頭の中でリプレイされ始める。これもまた同じ仕組みによるものです。
では一体、どうすれば良いのでしょうか?