不正請求、虚偽答弁、虚偽申請、人員基準違反が横行
不正請求とは、実際には提供していない介護サービスを提供したと偽り、介護報酬を不正に請求する行為を指す。例えば、訪問介護の現場でヘルパーが実際には訪問していないにもかかわらず、サービスを提供したと虚偽の記録を作成して報酬を請求する事例が代表的である。また、提供されたサービスの時間や内容を誇張し、過剰に請求する「過剰請求」も広く行われている。
虚偽答弁は、監査や調査に対して事業者が意図的に虚偽の情報を提供する行為だ。これは不正を隠蔽するために行われ、介護サービスの適正な運営を妨げる。例えば、監査時に「すべてのサービスが適切に実施されている」と虚偽の説明をし、実際には基準に達していないサービスが提供されていたことが後から発覚するケースもある。
また虚偽申請とは、事業所が介護保険の認可や補助金を申請する際に、実際の状況と異なる内容を記載して申請を行うことである。これにより本来受け取るべきではない介護報酬や補助金を不正に取得する。例えば、介護施設が必要な人員基準を満たしていないにもかかわらず、基準を満たしていると虚偽の申請を行う事例が報告されている。
そして人員基準違反とは、介護サービスを提供する上で必要な最低限の人員を確保せずに運営を続ける行為である。介護施設では、看護師や介護職員が法令で定められた人数に達していないにもかかわらず、サービスを提供し続けることが少なくない。これは、サービスの質を著しく低下させ、高齢者の安全を脅かす重大な違反である。
厚労省の2022年度の報告によれば、1335件の監査が実施され、そのうち487件で改善報告が求められ、288件で改善勧告が行われた。しかし、これらの数字はあくまで監査が実施された事業所に限ったものであり、実際には監査すら行われていない事業所が多く存在する。とくに、全国の自治体のうち、約50.1%しか集団指導を実施していない現状を鑑みると、不正が行われている可能性がある施設はさらに多いのは言うまでもない。