デイサービスでも不正が
また、会計検査院が内閣に送付した「令和4年度決算検査報告」によると、介護保険に関する費用が本来よりも多く支払われていた事例が複数明らかになっている。全国各地の市区町村で、国から支払われる介護給付費や負担金の交付額が過大となっており、その総額は1億4844万円に達していた。この過剰な支出は、税金を使った国の支援制度の不備を浮き彫りにするもので、介護保険制度の問題点が改めて浮き彫りになった。
介護保険制度における費用は、利用者の保険料と税金で賄われる。具体的には、「介護給付費」として介護サービスの提供にかかる費用のうち、利用者の自己負担分を除いた部分を国と地方自治体が負担する。国の負担は25%、都道府県と市区町村がそれぞれ12.5%を負担し、残りの50%を介護保険料で賄う。
ところが、一部の市区町村では、介護給付費を計算する際に「施設介護」と「在宅介護」の区分を誤るケースがあった。これは本来、国の負担割合が低い施設介護サービスを、負担割合が高い在宅介護サービスとして計上したものであり、会計検査院の調査によってその実態が明らかになっている。
例えば、千葉県香取郡神崎町では、2016年度から19年度にかけて、施設介護の費用をすべて在宅介護として計上し、その結果、国からの負担金が483万円も過大に支払われていた。
また、通所介護(デイサービス)においても不正な加算が行われていたことが明らかになっている。18の事業者が基準を満たしていないにもかかわらず、理学療法士や看護職員が十分に配置されていない状態で加算を行い、その結果、75の市区町村で5722万円の過大支払いが発生した。このうち1653万円は国からの不正支出であった。
このような会計検査院の報告は、介護保険制度の運用において地方自治体や介護事業者が正確な処理を行っていないことを浮き彫りにしている。介護保険制度は、高齢者やその家族が安心して介護サービスを利用できるようにつくられたものであるが、運用に不備があればサービスの質が低下し、最も必要な支援が届かなくなる。また、税金の無駄遣いは国民全体に影響を及ぼすため、適切な運用が求められる。
文/甚野博則