批判を受け一時は発表保留も、強気に擁立

「応援いただいている方々が、今回の擁立に懸念も心配も危惧も持っておられることは、本当に申し訳ない」

国民民主党の玉木雄一郎代表は20日の会見で、山尾氏や須藤氏らの擁立に批判の声が相次いでいることについて、神妙な面持ちで謝罪した。

山尾氏らの擁立の影響は如実に出ている。

共同通信社が17、18日に実施した世論調査で政党支持率が前回から5.2ポイント減の13.2%となるなど、各社の世論調査で支持率が軒なみ下落。18日に投開票された埼玉県和光市議補選でも国民民主の候補が落選した。

国民民主の公認候補となった足立康史氏(左上)、山尾志桜里氏(右上)、薬師寺道代氏(左下)、須藤元気氏(右下)(国民民主党HPより)
国民民主の公認候補となった足立康史氏(左上)、山尾志桜里氏(右上)、薬師寺道代氏(左下)、須藤元気氏(右下)(国民民主党HPより)
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正式に山尾氏らの擁立が決まる前から、こうした逆風の予兆はあった。

一部メディアで山尾氏らが出馬見込みと報道されると、世論からも批判が噴出。党内でも「『山尾氏らが比例名簿にいるなら、比例は国民民主に入れたくない』と票が逃げる可能性がある」と疑問視する声もあった。

ただ、玉木氏ら執行部は発表を延期したものの、最終的には擁立に踏み切った。

「党所属議員の『偽名不倫』スキャンダルが報じられるなどピンチもありましたが、党勢は堅調。参院選の情勢調査では、例えば複数人が当選する、とある選挙区では、2位に10ポイントほどの大差をつけて1位になっているところもあります。これまでにない追い風に、玉木氏らは強気になっていました」(国民民主党関係者)

国民民主・玉木雄一郎代表(本人Xより)
国民民主・玉木雄一郎代表(本人Xより)

「山尾氏以外」の選択肢も多く用意し、比例に大量擁立

しかし、山尾氏らの擁立を正式に発表した後も批判は想定以上で、玉木氏らは火消しに躍起になっている。

そのための方策の一つが「大量擁立」だ。

山尾氏らの擁立で批判が殺到した直後の21日、国民民主は比例代表に、東進ハイスクールの名物講師として知られる荒巻豊志氏など新人5人を擁立することを追加発表。

2022年の参院選では、労組内の組織内候補3人のみの当選にとどまり、電機連合の組織内候補だった矢田稚子氏が落選したほど党勢はふるわなかったが、今回は、読売新聞の世論調査(5月16~18日実施)で、比例の投票先として1位の自民(26%)に続く2位(14%)につけていることもあり、現時点で約20人と多めの候補者数となっている。

東進ハイスクールの名物講師としても有名な荒巻豊志氏(国民民主党HPより)
東進ハイスクールの名物講師としても有名な荒巻豊志氏(国民民主党HPより)

榛葉賀津也幹事長は会見で「切磋琢磨で頑張った順から当選する。評判が悪ければ、その方には札が入らないだけ」と述べ、国民民主の中にさまざまな比例の候補者がいるため、暗に「山尾氏らに入れたくなければ、ほかの多くの候補者の中から選んで投票してほしい」と理解を求めた形だ。

ただ、早くも「新人大量擁立作戦」の行く末を心配する声が出ている。

「もともと国民民主には元日銀職員の大塚耕平氏、元財務省職員の岸本周平氏(前和歌山県知事、急逝)、維新に移った前原誠司氏など、政党規模のわりに政策通やベテランが多く、永田町の『お作法』もわかっていました。大量に新人を擁立しても即戦力という点では不十分だし、山尾氏らを擁立したインパクトも簡単には消えません」(全国紙政治部記者)