CMでしか見ることのできない大谷翔平 

起用社数、作品数、放送回数といった数字はもちろん驚異的だが、注目したい点は、大谷が出演するCM内容の広がりだ。

「これまでのCMはユニフォーム姿で登場し野球選手やアスリートを連想させるものや、スーツ姿でビシッと決めるなど大谷さんの“かっこよさ”にフォーカスしたものが中心でした。

特に、『世界の頂点に挑戦し、活躍する』という大谷さんの姿は、日本から海外へグローバル展開を強化する企業、逆に、日本へ訴求したい海外企業にとって最適。企業やブランドの認知度を高めることを目的とした広告に起用されるケースが多かったです」

だが、今年はこれまでとは異なるテイストのCMが増えている。

例えば、⽇清製粉グループ『マ・マー』の「いいもの、⾷べよう。」篇は、大谷がエプロン姿でキッチンに立ち、パスタ作りに挑戦する内容。

伊藤園の『お〜いお茶』「お茶の常識、すてましょう。」篇は、ビーチでサッカーボールをリフティングするシーンから始まり、最後には、リフティングに失敗し、焦った表情をうかべる大谷の姿も差し込まれている。

「2025年は、“CMでしか見ることのできない大谷翔平”を描く作品が増えています。マウンドでは見ることのできない柔らかい表情や意外な一面。大谷選手を多面的に描いている点がこれまでとの大きな違いです」

さらに、関根氏は「CMタレントとしても、唯一無二の価値を発揮し始めている」と分析する。

CM総研では、視聴者3000名を対象したさまざまなCMに関する調査を毎月実施している。

それらの回答をまとめ、有益な情報を探し出す「テキストマイニング分析」をすると、2024年までは「選手」「格好良い」など、大谷自身に関連するワードが多かった。

大谷翔平のCMにまつわるテキストマイニングの結果(提供/CM総合研究所)
大谷翔平のCMにまつわるテキストマイニングの結果(提供/CM総合研究所)

だが、2025年はこれらに加えて、「美味しそう」「食べた」「お茶」など、CMの内容や商品への言及が増えている。

「『食べてみたい』『欲しい』など商品への購入意向を感じさせるワードが増えていることがわかります。これは、超一流のアスリートであるとともに、商品の売れ行きに影響力を持つ『CMタレント』として存在感が高まっている証明になります」