ほんの些細なことに幸せを感じている
──高橋さんは、日常の中で“幸福”を見つけるのは得意なほうですか?
「今日はめちゃめちゃ暖かいじゃないか」とか、「ご飯が美味しいな」など、毎日本当に感謝しています。年々、ほんの些細なことで幸せを感じるようになってきた気がします。
──その変化にはきっかけが?
仏壇や神棚に手を合わせるようになったんです。最近は時間ができるようになったので、毎朝早く起きて週5日くらいはするようにしています。
別に宗派とかまったくこだわりはないんですけれど、手を合わせているとおのずと「ありがたい」というような気持ちが出てくるんです。
最初は手を合わせるという単なるポーズから入ったけれど、日々の習慣になってしまうとネガティブに思っていたことがたちどころに消えていきました。
──ポーズだけで気持ちが変わるんですね。
もうただひたすらやること。1ヶ月くらいやってみて欲しいです。最初の頃は僕も文句ばかり浮かんできたんですけれど、そのうち脳が感謝モードになってくるんです。
脳をだますくらいの気持ちでやっていくと、意外といろんなものに色がつき始めるというか。日常的に見ていた景色が「思っていたよりいいじゃん」と思えるようになるんです。
──なんだか性格も変わりそうですね。
それと似たようなことなんですが、今回のヴェネツィア・ロケで出会った日本語が話せるイタリア人スタッフの女性のかたがいて、イタリア人同士で話しているときはとても仕事ができるかっこいい感じなのに、日本語を話すときには途端に大阪弁のおばちゃんみたいに気さくな雰囲気になるんです(笑)。
その人は多分、大阪のかたから日本語を習ったのだと思うのですが、言語が性格に影響を及ぼしている可能性はある。
ブラッド・ピットに憧れて英語を勉強していた友人も、普段はすごくおちゃらけているのに、英語をしゃべるとブラッド・ピットみたいなすごくいい男になるんですよ。
つまり性格づけとは心の中にある問題だけではなく、ポーズから何かを抽出して感情めいたものにすることもできるんじゃないかと思ったんです。
そう考えると、人間の感情ってとても曖昧で適当だなと。物理的に脳をだましていくことによって、健全なメンタルにつなげていくこともできる。
自分の性格なんて意外と簡単なことで払拭されちゃうかもしれないと思うと、とても気が楽になるし、おもしろいなと思います。
取材・文/松山梢 撮影/石田壮一
ヘアメイク/田中真維(MARVEE) スタイリスト/秋山貴紀〔A Inc.〕
『岸辺露伴は動かない 懺悔室』
漫画家・岸辺露伴(高橋一生)はヴェネツィアの教会で、仮面を被った男の恐ろしい懺悔を聞く。それは誤って浮浪者を殺したことでかけられた「幸せの絶頂の時に“絶望”を味わう」呪いの告白だった。幸福から必死に逃れようと生きてきた男は、ある日無邪気に遊ぶ娘を見て「心からの幸せ」を感じてしまう。その瞬間、死んだ筈の浮浪者が現れ、ポップコーンを使った試練に挑まされる。「ポップコーンを投げて3回続けて口でキャッチできたら俺の呪いは消える。しかし失敗したら最大の絶望を受け入れろ…」。奇妙な告白にのめり込む露伴は、相手を本にして人の記憶や体験を読むことができる特殊能力を使ってしまう…。やがて自身にも「幸福になる呪い」が襲いかかっている事に気付く。
© 2025『岸辺露伴は動かない 懺悔室』製作委員会 © LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社 5月23日(金)ロードショー