立憲は消費減税議論の高まりに「耐えるだけ」

一方の立憲は4月22日の党内の会合で、食料品の消費税率を時限的に「ゼロ」とする案、消費税率を一律5%に引き下げる案などを議論。

背景には、自公やほかの野党で消費減税を求める声が高まり、世論も後押ししているなか、立憲が消費減税に否定的な立場をとっていては、参院選は厳しい戦いになるとの懸念がある。

「立憲には野田代表はじめ消費減税に消極的な議員も多い。でも世論がこれだけ消費減税に前向きだと、消費減税を批判しづらい」(立憲議員)

野田佳彦代表(本人公式Xより)
野田佳彦代表(本人公式Xより)

党内外で消費減税の議論が盛り上がるなか、立憲は「あとは野田代表がどう決めるか。それまで耐えるだけだ」(立憲議員)という状況で、どの案を参院選公約とするかの結論が近く出る見込みだ。 

国民民主は、一歩間違えると追い風ムードが一転する瀬戸際

一方、今や立憲を支持率で上回る国民民主は、消費税を時限的に5%にするよう求めている。

ただ、玉木雄一郎代表も「消費税を下げることを石破政権が決めたら、選挙的には脅威」と、石破首相の決断を警戒。さらに、国民民主は追い風ムードが変わるかどうかの瀬戸際にある。

国民民主は相次いで参院選での目玉候補の擁立を決め、定数6(ほか、蓮舫氏の自動失職に伴う3年間の任期の欠員1の補充も)の東京選挙区では元NHKアナウンサーの牛田茉友氏と会社員の奥村祥大氏の2人を立てる。

左から、玉木雄一郎代表、奥村祥大氏、牛田茉友氏、榛葉賀津也幹事長(玉木雄一郎公式Xより)
左から、玉木雄一郎代表、奥村祥大氏、牛田茉友氏、榛葉賀津也幹事長(玉木雄一郎公式Xより)

比例票の掘り起こしも期待し、強気の戦略に出た形だが、「党に勢いがあるとはいえ、さすがに2人を当選させるのは難しい」(国民民主関係者)との見方がもっぱらだ。

そして比例では、菅野(国会議員時代は山尾)志桜里元衆院議員や須藤元気元参院議員らの擁立を検討している。

「菅野氏は民進党時代、不倫疑惑や政治資金問題が報じられ、その後立憲に入党するも離党して国民民主へ。須藤氏は消費減税を訴えて立憲を離党。

須藤氏は立憲の全国比例で議席を獲得したにもかかわらず離党後も参院議員を続けたため、当時の執行部を激怒させました。

こうした人物の擁立により、立憲との溝はますます埋まらないことは必至。諸刃の剣となる可能性もある。自民としては野党が一枚岩にならずありがたいでしょう」(全国紙政治部記者)

菅野志桜里氏(本人公式Xより)
菅野志桜里氏(本人公式Xより)
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とくに菅野氏をめぐっては、不倫報道によって当時、民進党の前原誠司代表が幹事長起用を取りやめた経緯がある。

森友・加計学園問題で支持率が低下していた安倍晋三首相(当時)は、この混乱を反転攻勢の機会とみて衆院を解散。そのタイミングで民進党は希望の党と立憲に分裂し、自民党の勝利に終わった。

立憲議員からは「菅野氏が出てくると、自民への逆風が止まり安倍政権が続くことになった希望の党騒動の悪夢を思い出す。今回も、石破政権が低支持率でも、消費減税の打ち出し一つで流れが変わるのでは」との声も出ている。

「政権の維持を第一に考え、変節もいとわない」とされてきた石破首相。参院選を控え、一枚岩になれない野党を前に消費減税を打ち出し、局面打開を図るのか。

トランプ関税によって裏金問題や商品券問題が取りざたされることが減った今、消費減税に対するスタンスが参院選の行方を左右しそうだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班