「官僚制組織の逆機能」
不正が行われた原因や背景として、タイトで硬直的な開発スケジュールによる極度のプレッシャー、現場任せで管理職が関与しない態勢、不正やごまかしを行ってもみつからないブラックボックス化した職場環境などがあげられている。
また真の原因として、踏み込んだ実態把握を行わないなどリスク感度の鈍かった経営幹部の責任を追及するとともに、つぎのような開発部門の組織風土が指摘された。
① 現場と管理職の縦方向の乖離に加え、部署間の横の連携やコミュニケーションも同様に不足していること。
② 「できて当たり前」の発想が強く、何か失敗があった場合には、部署や担当者に対する激しい𠮟責や非難がみられること。
③ 全体的に人員不足の状態にあり、各従業員に余裕がなく自分の目の前の仕事をこなすことに精一杯であること(ダイハツ工業株式会社第三者委員会調査報告書、2023年12月20日)。
なお組織風土に関しては、国土交通省が2024年に出した是正命令でも、上司への意見を抑圧する組織風土の一掃が求められている。
ここで指摘されている①や②、とりわけ①の組織風土こそ、世にいう「官僚制組織の逆機能」そのものである。
もう1つ注目しておきたいのは、海外開発プロジェクトが増えて、「まだまだ未熟な現地開発者をフォローしながらなんとか力業で乗り切った日程が実績となり、無茶苦茶な日程が標準となる」(前掲、第三者委員会調査報告書)という社員の言葉だ。
さらにつけ加えておきたいのは、親会社であるトヨタ自動車との関係だ。
前述したようにダイハツは2016年にトヨタ自動車の完全子会社となったが、親会社であるトヨタ自動車や豊田自動織機などトヨタグループで2023年以降、国の認証試験をめぐる不正がつぎつぎと発覚している。
このことは企業グループそのものもまた1つの官僚制組織であり、そこでは不正の温床となる組織風土も共有されていることを強く印象づける。
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