藤原ヒロシ(以下藤原) デザイン集団「フラグメント fragment design」主宰。世界中の企業とのコラボレーションを手がけている
皆川壮一郎(以下皆川) クリエイティブディレクター。株式会社みんな代表(2023年時点では博報堂ケトル所属)
鹿瀬島英介(以下鹿瀬島) 株式会社ポケモン執行役員
「監修」は「校閲」ではない
皆川 最後に、ここからがいちばん大事なんですけど、ヒロシさん、このチームのことを「新しいことを探し続けている最高のチーム」とおっしゃっています。素晴らしい姿勢ですよね、これは。
藤原 僕が言ったことをまとめて形にしてくれる。ホテルのワンフロアでやろうとか、そういうことも笑い話ですませずに、最後まで付き合ってくれる。
皆川 あと、「無理してやらない」というルールも素晴らしいと思います。「4月がきたから何かやらなきゃ」で始まる仕事って結構多いんですけど、いいことが思いつかなかったらやらない。定期的なミーティングは組んでいるんですか?
鹿瀬島 そうですね。たまにお会いして、そこからもう一回、ゼロベースでディスカッションをするみたいな形ですね。
皆川 ヒロシさんが「アイデンティティが強ければ強いほど、いじりがいがある」という話をされていたんですけど、ポケモンはその最たるものということですかね? 確立されている。
藤原 すでにある、みんなが認識しているものだから、ちょっと変えるだけ。むしろそのくらいのほうが面白みが出せると思います。
皆川 「素人であることも大切だ」とおっしゃっていましたよね。
藤原 外部の目線で仕事をするということ、それが醍醐味でもあるんです。僕が自分からどんどんやって、ポケモンの社員みたいに染まってしまったら、意味がないかなって。
皆川 そこは鹿瀬島さんがサポートしているということなんですか?
鹿瀬島 そうですね。ヒロシさんがポケモンに詳しくない部分で、ポケモンのポケモンらしさみたいなものの担保は、僕ら側でしっかりやろうという、そういう連携の仕方ですね。
皆川 今日はブランドサイドの人もたくさんいらしてるんですけど、いつも広告会社でクライアントワークをやっている立場として、とても勉強になりました。
鹿瀬島 うちのチームのメンバーからもらったコメントがあるので、私から説明します。「監修≠校閲。ノーを出すだけではダメ」と。
ポケモンって新しいクリエイティブを出していくときに、ポケモンの個々の設定や世界観をちゃんと守って、さっき言ったようにポケモンらしさを担保する「監修」というプロセスがあるんですね。
それはただ単純にルールに沿ってイエスかノーを決めるだけじゃなくて、ポケモンにとって、「これはめちゃくちゃいいぞ」「価値を上げるぞ」ということがあれば、ルールのほうを少し曲げたり、場合によってはちょっと解釈を変えたりする。
そうやって新しく生まれる表現に寄り添う、そういう考え方をする特殊な会社なので、こういうコメントをくれたのかなと思います。