Aさんと夫の最後の会話は、救急車を待つ間に夫から苦しそうにうめきながら言われた『ごめんな…』という言葉だった。
「そのときは苦しい中で私に迷惑をかけていることを詫びているのだと思いましたが、債務が出てきてから『このことを詫びたのか』と悟りました。
でも、搬送中と病室に移った後の夫の苦しみようは凄まじく、手足をバタバタさせて『ぎゃー!』『助けてくれ!』と、見ているのも苦しくなる有様でした」
その後、Aさんの夫は意識が戻ることなく、朝方に息を引き取った。Aさんは夫の死を振り返る。
「夫は記念日や私の誕生日によくメッセージをくれました。『これからも変わらず仲良く過ごそうね 愛してるよ』『自分の体を大切にして悲しませない様にするね。感謝と愛をこめて』こんなメッセージをくれる夫が、キャバクラや風俗でもなく、20代のライバーに命を削ってまで貢いでいたなんて。夫の死の直後は絶望して夜も眠れず、食欲もありませんでした」
夫が”投げ銭の沼”にはまった、ライバーBとはどのような人物なのか。ある業界関係者はこう証言した。
「Bはもともとラウンジで働いていたのですが、業界のキーマンに声をかけられ芸能界入りしました。コロナ禍で仕事が減り、副業としてはじめたのが配信業だったようです。配信で金が稼げるようになると、横柄になり、給料やギャラの取り分で事務所のとの関係も悪くなったと聞いています」
「債務整理を終えてから死後離婚しました」
その後、Aさんは夫の遺骨を義父母に渡し、現在はどこに納骨されているかも知らない。
「債務整理を終えてから死後離婚しました。今回の件で人間には二面性があるのだと知りましたし、真っ当に生きて無趣味だった夫が何かの拍子でライブ配信にハマって、自分で処理できないほどの債務を抱え、自分の命さえも失ってしまった。彼の人生は何だったのかと…」
Aさんの自宅には夫の位牌もなければ写真もない。Aさんは嘆く。
「夫がどんな顔をしていたかさえ、今では忘れてしまいました(苦笑)。夫は自業自得だと言われたらそれまでですが、人の人生を狂わせかねない過剰な“投げ銭”投資ができてしまう仕組みには、今後なんらかの対策がなされないかなあ、とは思います」
ライブ配信の投げ銭システムに、今後なんらかの規制がかかる日はくるのだろうか。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班