厳しい上下関係の中で無効化する会議

それでも耐え続けたAさんに、また新人公演の準備が巡ってきたのが、2023年の秋です。新人公演の配役表に関する一件で、宙組幹部は何と午後十時以降になっても、Aさんを叱責しながら指導したのです。結局、その日の帰宅は日が変わってからになりました。

そのあともAさんへの虐待は、新人公演が近づくにつれて激化します。演出担当者の怠慢で生じた業務を、Aさんが肩代わりさせられ、衣装部門から上がって来た苦情も、上級生はAさんの責任だとして叱責します。これは下級生の衣装の取り扱い方が悪かったからですが、Aさんの指導が悪いのだと因縁をつけたのです。

いよいよ新人公演が目前に迫ると、宙組上級生のAさんへの虐待は激しさを増します。Aさんには何の落ち度もないのに、大声で叱責します。「指導」という名目でです。これは2日間にわたって続けられ、上級生はもうひとりの上級生を呼んで、二人で叱責「指導」します。挙句の果てには、何人もの上級生がいる前で、Aさんに嘘をついているだろうと、何度も詰問します。

東京千代田区にある東京宝塚劇場
東京千代田区にある東京宝塚劇場

こうやってAさんに対する暴力と暴言、虐待を綴っていると、これが芸術を売りものとする劇団のすることかと、私は怒りにかられます。

Aさんに対する2年もの虐待の間に、上級生たちは必ずや公演に向けてのミーティングを開いていたはずです。上級生の中には、Aさんへの虐待を見聞きした人もいたでしょう。これは人間としてしてはいけないこと、一種の犯罪ではないかと思った劇団員もいたはずです。

しかし「どこかおかしくはないですか」と問い質す劇団員は、ひとりとしていませんでした。ミーティングは、最重要な問題を棚上げして、公演のための練習と段取りだけが議題になっていたに違いありません。それも上意下達で、中堅や下級生は「はい」としか言えない雰囲気が支配していたのです。

こういう異様な宙組の実態は、プロデューサーも知っていたでしょうが、放置していました。とすると、この虐待という犯罪を放置する風潮は、宝塚歌劇団、またそれを管轄する阪急阪神ホールディングスにも広がっていたとしか考えられません。この実態は、後日明白になります。