尊敬するスピッツからの影響「語り出すとキリがなくて……」
――書籍内で、スピッツについて「語り始めたら終わらない」と書かれていました。具体的に、どのような部分に感銘を受け、ご自身に影響を与えたのでしょうか?
本当に語り出すとキリがないのですが、わかりやすい部分で言うと、単語と単語の組み合わせですね。スピッツの歌詞には、それまで誰もつなげなかったような言葉の組み合わせが、さりげなく散りばめられています。
たとえば「空も飛べるはず」に出てくる《ゴミできらめく世界》というフレーズ。「ゴミ」という言葉は一般的にネガティブなものですが、そこに「きらめく」と相反する表現を続けることで、独特の美しさが生まれていますよね。また、「スピカ」の《幸せは途切れながらも 続くのです》という歌詞も、「幸せ」という言葉のすぐ後に「途切れる」を持ってくるのがすごく新鮮で、普通はなかなか思いつかない組み合わせだと思います。
これまで歌詞の世界では、「綺麗なものは綺麗なもの、汚いものは汚いもの」と分けて描かれることが多かった気がします。でも、スピッツの歌詞では、綺麗なものとそうでないものがいつも隣り合わせになっていて、その世界観に、すごく感銘を受けましたね。
――作詞をするうえで、ターニングポイントとなった歌詞や出来事はありますか?
歌詞そのものではないのですが、原田知世さんと伊藤ゴローさんと一緒に楽曲制作をした経験は、自分にとって大きな出来事のひとつです。
お二人とは、歌詞も含めて3人でセッションしながら作ることがあり、スタジオに入って、原田さんが実際に私の書いた歌詞を歌ってみて「しっくりこない」と感じたら、その場で書き換えたり、伊藤さんが楽曲自体を少し変えたりすることもあって。
これまでも歌録りに参加することはあったのですが、作詞家がプリプロ(リハーサルを含めた準備演奏)の段階から関わるというのは、自分にとって新鮮でした。「作詞もこういう形で作品に入り込んでいいのか!」と、すごく勉強になりましたね。