インバウンドで景気回復どころではなく、資本流出の危機に
相続税・贈与税がない国では不動産売却で売却益が出た場合の譲渡所得税の回避スキームも存在するという。
この点も一度、相続税がない国の外国人の手に不動産が渡ったら日本側には戻ってこない理由と言えそうだ。
前出の北上氏が解説する。
「例えば、母国で贈与税がかからない在日中国人が不動産を売却しようとするとします。仮に1億円で買ったタワマンが3年で1億5000万円に値上がりした後に売ろうとした場合どうするか。税務署から贈与と判断されないぎりぎりの値段、例えば買った値段の1億円で資産を渡したい相手と売買契約を結びます。
そして差額の5000万円分を中国国内の人民元で“決済”すれば、本来日本で発生するはずの2000万円(5年以内の売却は約40%)の不動産譲渡所得税の納税義務が回避できるのです。
もちろんグレーですが、これは日本の税務当局は追えないでしょう。実際、在日中国人は売却益が出そうな場合に日本人に売ってしまうと納税義務が発生するので、中国国内にある程度の資産を持つ中国人の買い手を見つけて売ろうとするそうです。
日本人に売って税金を払うことを考えれば、中国人なら多少安く売っても、売り手、買い手ともにウィンウィンですから」
このように、今後、日本の好立地や投資用の不動産は中国人をはじめとした、外国人の手に渡ってしまい、日本人はそこに賃貸で住むことになるかもしれない。となれば、その家賃も海外に渡り、資本流出となってしまう。これではインバウンドで景気回復どころではない。
元財務官僚で元国会議員の桜内文城氏が言う。
「そもそも、非居住者の外国人に日本の不動産が日本人と同価格で買われている時点で、政治の怠慢だと思います。
例えばシンガポールでは、永住権のない外国人が住宅を購入する際の加算印紙税(ABSD)税率30%から60%への引き上げを23年に実施しています。課税逃れを防ぐため、法人や信託を利用する場合の税率も35%から65%にしています。
また、外国人の不動産取得に国際法上の相互主義を適用することも重要でしょう。中国のように、外国人による土地や建物の入手が禁止されている国の人に、日本の土地や建物を自由に購入することを認めるべきではありません。
すでに購入されてしまった不動産は、現金ではなく、国が交付国債で買い上げることで、適切に徴税していくという考えもあります。
日本では不動産取得にあたって外国人に追加で税金をかけることはありませんが、国益に直結する土地や不動産の管理は徹底するべきです。
また、居住目的のタワマンには法人登記を許さないというルールを開発認可時に設けてもよいでしょう。いずれにせよ、日本国民が不利益を被るような現状が放置されるべきではありません」