タトゥーを消したい理由も十人十色 

学生といえば、こんな人たちも。

「10代のころに入れてしまった自彫りを除去したいという人たちも来ます。中には現役の高校生もいます。だいだい、針に墨汁を付けてちょんちょんと入れているんですが、お店で入れる機械彫りみたいに一定の深さではないので、治療が大変なんですよね。

『恋人の名前を入れた』なんていうのもよくありますが、これはいろんな意味でおすすめしませんね」

名前を入れるデメリットを、めかた院長はこう解説する。

「離婚したんで、前のパートナーの名前を消してほしいと。名字も入れたフルネームで入れていたんですけど、気分が悪いので下の名前だけでもとにかく早く消してほしい、と熱望されました。

ご結婚された際は1ミリも予想しなかったでしょうが、その後こういう可能性もあるわけですからね」

綺麗に消えた刺青(写真提供/キルシェクリニック)
綺麗に消えた刺青(写真提供/キルシェクリニック)

一方で、夫婦でいらした方もいるそうだ。その2人は結婚を期にお互いの名前を入れるもとある理由で除去を望んだという。

「子どもができて、このままだと家族でプールや温泉に行けないから消したいということでした。前向きな話ではあるのですけれども、このご夫婦は、当クリニックのモニター価格制度を利用しようとされました。

この制度では、タトゥーの画像をメディアに掲載可ということでモニター価格を適用させていただくのですが、ばっちり個人情報が出ているタトゥーの場合、公にさらすのはちょっと難しいですからね。

結局、泣く泣く通常価格をご選択されました。ということで、個人情報のタトゥーを入れるのは、考えたほうがいいかもしれません」

「頭から足の裏まで」タトゥー除去を経験しているめかた院長。こんな変わった治療にも向き合ったとか。

「薄毛隠しとして、アートメイクで頭頂部や生え際に色を入れる方がいます。かなり痛いそうです。

それを修正したいといらっしゃるんですが、除去の場合、入れるときの倍は痛いと思いますよ…。

また、足の裏に、人の名前を入れた方がいらしたんですよ。『ものすごく憎い人間だから、足の裏に入れて、毎日踏んでやる』という理由で入れたそうです。

でも結局、その人が常に自分に『付いている』という感覚になってしまい、消したくなったそうです」 

ちなみに、「足の裏は角質が厚いので、レーザーを当てても他の箇所よりは痛くない」とのこと。

タトゥーに対し、「否定も肯定もする気はなく、どう消すかしか考えていない」と明言するめかた院長。後編では、治療の実態についておうかがいする。

キルシェクリニック院長・めかた啓介先生(撮影/木原みぎわ)
キルシェクリニック院長・めかた啓介先生(撮影/木原みぎわ)
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PROFILE●めかた啓介 1973年、東京生まれ。キルシェクリニック院長。美容外科医、美容皮膚科医、麻酔科専門医、麻酔科指導医。1999年、産業医科大学医学部卒業。麻酔科医・救命救急医として12年勤務後、美容外科医・美容皮膚科医として複数のクリニックグループにて院長を歴任。20000件以上手掛けているタトゥー除去治療のほか、脂肪吸引、麻酔施術にも定評がある。医師免許のほかに行政書士、測量士補、宅地建物取引士、FP、JAF国内A級ライセンスなど、さまざまな資格も所有する。 

取材・文/木原みぎわ