メジャーでも佐々木の武器になりそうな球種

まず、NPB最速記録でもある165キロを誇るストレートに関してはMLBトップレベルと言っていい。佐々木の昨季ストレート平均球速は156キロ。前年よりやや低下したとはいえ、NPB先発投手では断トツ。MLBでもトップレベルに該当する。

さらに大きな武器になりそうなのが、独特の変化をするフォーク(スプリット)だ。ロッテ時代、佐々木と史上最年少コンビでの完全試合を達成した松川虎生から、こんな話を聞いたことがある。

「フォークはスピードがある中でも不規則に落ちるので、ビックリしました」

NPB時代の佐々木は、剛速球とフォークで三振を量産したが、いわゆる「真っすぐ落ちる」フォークだけでなく、スライダー気味に落ちるフォークを投げることもあった。本人は投げ分けていたわけではないらしいが、この「特殊球」がMLBでは大きな武器になりうる。

佐々木とバッテリーを組んで完全試合を達成した松川も太鼓判を押す佐々木のフォーク
佐々木とバッテリーを組んで完全試合を達成した松川も太鼓判を押す佐々木のフォーク
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データ化が進んだ現在の野球界では、投手の投げるボールの変化量、スピード、変化方向などすべてが可視化される。これにより、打者はこれまで以上に投手のボールを「イメージ」しやすくなる。ただ、たとえば同じフォークであっても、他の投手と違う変化をする=特殊球である場合、イメージがしにくい。

昨季で言えば、今永昇太(シカゴ・カブス)のストレートも、MLB平均値を大きく上回るホップ成分を有した「特殊球」として、抜群の効果を発揮した。

NPB時代後半はスライダー気味に落ちるフォークが減ったようにも思えるが、実はこの球種こそ、佐々木の生命線になりうるのではないか――。

MLBでもトップレベルのストレートに、打者が見たことのない変化をするフォーク――。この2球種で、移籍1年目からMLBを席巻する佐々木朗希の姿が見られることを期待したい。

取材・文/花田雪