やめたくてもやめられず、3000万を一日で溶かす
「オンラインカジノをはじめてから約4ヶ月後には、貯金が底をつきました。でも、勝てば返せると思っていたので、借金をするようになり、消費者金融とクレジットカードのショッピング枠を使って、限度額いっぱいの300万円まで借りたんです。それでも勝てなくて、いよいよ賭けるお金もなくなり、自分にギャンブルの才能がないこともわかったので、もうやめようと決意しました」
その後、約8ヶ月間はオンラインカジノにはいっさい手を出さなかったという。そんな中、借金返済のお金が1万円だけ足りないという状況になってしまった。工面の方法を考えたときに、オンラインカジノのことが頭をよぎった。
「バカラで1回だけ、1万円だけ賭けて、勝てば返済できる。だから、それを最後に絶対にやめようと思ったんです。それで勝ったんですよね。でも、もっとほしくなってしまってやめられなくなって、またギャンブル沼にはまってしまったんです」
やめたくても、やめられないというのはギャンブル依存症の典型的症状だ。いくら儲かったとしても歯止めがきかない。「最高3000万円まで勝ったこともありますが、一日で溶かしてしまいました」と菊池さん。
ギャンブル依存症になるとギャンブルが生活の中心となり、社会生活にも支障をきたすようになる。
「頭の中は常にギャンブルと多額の借金のことでいっぱいでした。誰かと会っているときでさえ、ギャンブルがしたい、次の借金はどう返そう、そんなことばかり考えていました。借金を返すために働かなければと思い、約束を早めに切り上げることもありました」
借金額は500万円まで膨らみ、もはや借入先もなくなった菊池さん。ギャンブルから抜け出せず、借金の泥沼に苦しみ、心身ともに疲れ果てていた。やめたいと思いながらもコントロールできない自分の状態に違和感を覚え、これはギャンブル依存症なのではないかと考えるようになり、支援団体への相談を決意したという。
「自助グループに参加すると、ギャンブルをやめたい人たちが集まっていて、苦しんでいるのは自分一人ではないと実感できました。ギャンブルをやめた人の体験談を聞き、自分がギャンブルに走った原因や生き方を見つめなおすことで、ようやく新しい人生を歩み始めることができたんです。一昨年の5月からギャンブルをやめて、もうすぐ2年になります」
ギャンブルをやめたくてもやめられない場合は、依存症に陥っている可能性が高く、一人で解決することは困難だ。一人で抱え込むのではなく、まずは専門機関に相談しよう。
今回の騒動を機に多くの人がその危険性に気づき、菊池さんのような被害者がこれ以上増えないことを願うばかりだ。
公益社団法人ギャンブル依存症問題を考える会
070-4501-9625
取材・文/福永洋一